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ホーム > 新刊案内 > 村上春樹の動物誌

写真:村上春樹の動物誌
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村上春樹の動物誌

小山 鉄郎 著

新書判 272ページ

定価:900円+税(2020年12月10日発売)

ISBN:978-4-657-20014-3

TSUTAYA
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MARUZEN & JUNKUDO
セブンネット
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作品概要

村上春樹氏のインタビューを所収!
日本記者クラブ賞に輝いた文芸記者の著者が、動物を手がかりに村上文学の森に深く分け入る 。 デビュー作の『風の歌を聴け』から『猫を棄てる』までを貫く核心のテーマとは 。好評を博した新聞連載記事を大幅加筆した待望の決定版!


◎『村上春樹の動物誌』の担当イラストレーターに聞く――北窓優太さん

 小山鉄郎氏の新書新刊『村上春樹の動物誌』でイラストを担当した北窓優太さん(38)=大阪府豊中市在住。新書の章扉にある30点のイラストは、村上春樹氏の深い作品世界にいざなう小山氏の考察に独自のアクセントを付けています。気鋭のグラフィックデザイナーでもある北窓さんに動物のイラストについて、編集部が聞きました。

――動物のイラストとはいえ、村上春樹氏の作品と、それに考察を加える小山鉄郎氏の「双方の世界」をくみ取って描くのは難しかったと思います。

北窓 僕自身、村上春樹さんの本が好きです。20代の頃に熱心に読みました。その読み方が浅いということを、小山さんの原稿を読みながら知りました。動物を糸口に考察を展開しながら、どんどん深くなっていく。重くて深いなあと感じました。

――イラスト制作で注意した点はどこですか。

北窓 村上春樹さんの作品世界を「大陸」と考えるなら、小山さんはその「大陸」の「地図」を作っている。海岸線、河川、平野、山脈などを「地図」に落とし込んでいっている。そして「大陸」のことを理解しようとしている。だから、僕は「大陸」のこと、「地図」のことを念頭に置き、「大陸」と「地図」の関係を忘れないようにしました。小山さんが何千字も使って「地図」を表現しようとするのに対し、僕は一枚のイラストでそれを表現しなければならない。僕の「地図」がピンボケではいけない。そこに難しさと楽しさがありました。

――「新しい発見」があったわけですね。

北窓 小山さんの考察から浮かび上がるイメージ。村上春樹さんの作品から広がってくるイメージ。「双方の世界」を通じて僕の中に湧き上がってくるイメージ。それをイラストに表現することは新しい試みでした。例えば、第十三章の「羊男」。村上春樹さん自らが描いた絵が小説に載っています。まず、村上さんの絵のイメージを壊さず、そして過度に引きずられず、シンボリックで期待感が漂う「羊男」を描きました。実は小山さんの原稿を読むまでは、「羊男」が村上さんにとって「永遠のヒーロー」であることを知りませんでした。20代前半に『羊をめぐる冒険』を僕が読んだ時、「羊男」は物悲しい存在であると理解しました。小山さんの指摘を受けて、ある種の衝撃を受けました。

――北窓さんと同じような「新しい発見」を、イラストを見た読者も味わえるでしょうか。

北窓 小山さんの考察に続いて、僕のイラストを通じても「新しい発見」があるとうれしいです。小山さんは「村上春樹作品は、あらゆる読者の前に開かれている」と言っています。僕のイラストも、読者のイメージを縛ったり、見る人に固定観念を植え付けたりすることがあってはいけないと思います。だから徹底的に、象徴的に描いたのです。村上春樹小説に対する読者のイメージが、僕のイラストからもさらに広がっていくことを願っています。(文責・俊)

「羊男」Ⓒ北窓優太.jpg
「羊男」(Ⓒ北窓優太)








北窓優太氏個展写真.jpg
個展会場で『村上春樹の動物誌』の原画(イラスト)を説明する北窓優太氏=東京・神宮前、12月15日午前






【個展の情報】『村上春樹の動物誌』のイラスト全30点の展示を含む北窓優太さんの個展「LIFE & SLUMBER」が12月15日から12月20日まで都内で開かれます。会場は「Popularity gallery & studio」(東京都渋谷区神宮前2-3-24、電話番号 03-5770-2331)で、午前11時から午後7時まで(最終日は午後5時まで)。入場無料。全日、北窓さんが会場に詰める予定です。個展の関連URLはこちら。https://www.popularity.co.jp/about-1

著者プロフィール(編者、訳者等含む)

1949年生まれ。群馬県出身。一橋大学経済学部卒。共同通信社編集委員・論説委員。73年同社に入社し,社会部を経て84年に文化部へ。村上春樹氏は次代の日本文学を担う作家だと注目し、85年から取材を続ける。村上氏のインタビューは計10回にも及ぶ。村上春樹文学の解読などで文芸ジャーナリズムの可能性を広げたとして、2013年度日本記者クラブ賞を受賞。著書に『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』『白川静さんに学ぶ 漢字は怖い』(共同通信社・新潮社)『村上春樹を読みつくす』(講談社)『あのとき、文学があった―「文学者追跡」完全版』(論創社)』『大変を生きる―日本の災害と文学』(作品社)『白川静入門―真・狂・遊』(平凡社)など。09年から白川静博士の業績を学ぶ同人会「白川静会」の事務局長を務める。

目次など

序章   深い森の中の生き物と神話

第一章 日本近代をめぐる冒険―――羊
第二章 日本人の豊かな言語感覚―――象
第三章 ほんの少し先に浮遊する「魂」―――螢
第四章 貫く、神話的な世界―――一角獣
第五章 魚系の名前で再生する―――猫 (その1)
第六章 成長示す、猫との会話能力―――猫(その2)
第七章 動きに満ちた話し言葉―――カンガルー
第八章 ブーメラン的な自己解体―――カエル
第九章 人の命ずるままに動く―――犬 (その1)
第十章 この世に戻ってくる呪術的な力 ―――犬(その2)
第十一章 タイガーをあなたの心に―――虎
第十二章 人間は記憶を燃料にして生きていくものなんや―――コオロギ
第十三章 村上春樹の「永遠のヒーロー」―――羊男
第十四章 「ピーター・キャット」とT・S・エリオット―――猫(その3)
第十五章 死者のイメージを持つ分身的友人―――鼠(ねずみ)
第十六章 歴史と戦争の死者たち―――青カケス
第十七章 魂の行く手を導く、内なる対話者―――カラス(その1)
第十八章 硬直したシステムへの強い否(いな)―――カラス(その2)
第十九章 太陽の光の照る現実社会を象徴―――蜂
第二十章 春の到来のような心温まる親しさ―――熊
第二十一章 小説を成立させる「第三者」―――ウナギ
第二十二章 心の暗闇の中での本当の導き手―――猿
第二十三章 君はどこに、いるか?―――いるか
第二十四章 太古から神聖な生命のシンボル―――魚
第二十五章 賢くて両義的な生き物―――蛇
第二十六章 延々と降りつづく細かい雨―――かたつむり
第二十七章 夜の智慧(ちえ)与える森の守護神―――フクロウ
第二十八章 世界のねじを巻く鳥――― ねじまき鳥
第二十九章 人間は自然の一部、動物の種である―――動物園

あとがきに代えて

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