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古代ローマ時代、法学者は法の重要な担い手だった。「法の民族」として精緻な法制度を作り上げ、近代法の形成にも多大な影響を与えた。本書では、ローマ法学が最も隆盛を迎えた帝政期において、その時代を代表する法学者の一人であるケルススに焦点をあてる。ケルススは「法は善および衡平の術である」をはじめとする法格言を残し、ローマ皇帝の顧問会メンバーとして施策を支えた。それらの法格言を多角的に分析し、ケルススと同時代の法学者であるユリアヌスの法学と比較し、帝政期ローマの法学者像を導き出す。法文を読み解くことで古代ローマ社会の実態にふれられる法制史。
1982年生まれ。東北学院大学法学部講師。2018年、博士(法学)早稲田大学。専門はローマ法、西洋法制史。
序 論
第1節 問題関心
第2節 先行研究
第3節 本書の構成
第1章 帝政前期ローマの法学者を取り巻く状況
第1節 帝政前期ローマにおける法学の状況
第2節 プロクルス学派とサビヌス学派
第3節 皇帝顧問会での法学者の活動
第4節 小 括
コラム:ローマの歴史
第2章 公職者としてのケルススの活動
第1節 ケルススの経歴
第2節 同元老院議決の分析にあたっての諸前提
第3節 S.C.Q.P.の内容を伝える史料(D.5,3,20,6~6d)
第4節 ハドリアヌス帝と元老院との関係におけるS.C.Q.P.
第5節 小 括
コラム:ギリシア人とエトルリア人
第3章 ケルススが残した法格言(1)――「法は善および衡平の術である」
第1節 先行研究
第2節 共和政期および帝政期における善および衡平bonum et aequumのあり方
第3節 ケルススのb.e.aの用い方
第4節 小 括
コラム:ローマ人の名前
第4章 ケルススが残した法格言(2)――アクィリウス法の解釈を中心として
第1節 先行研究
第2節 共和政期におけるvis ac potestasのあり方
第3節 帝政期におけるvis ac potestasのあり方
第4節 ケルススの法解釈事例
第5節 小 括
コラム:ローマの公職
第5章 ケルススの遺贈解釈――家財道具supellexの遺贈を中心に
第1節 D.33,10,7
第2節 ローマにおける家財道具遺贈
第3節 D.33,10 に採録される諸法文
第4節 小 括
コラム:ローマの皇帝
第6章 ユリアヌスの法解釈
第1節 ユリアヌスの出自および法学修習経歴,公職就任経歴
第2節 ユリアヌスのアクィリウス法解釈法文(D.9,2,51)
第3節 アクィリウス法上の文言「殺害する」の理解
第4節 小 括
結 論
第1節 ケルススの法学者像
第2節 ユリアヌスとの対比において
あとがき
初出一覧
参考文献一覧
索 引
英文要旨