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中国においてボーイスカウトは「童子軍」と呼ばれ、中華民国期に学校の内外で広く推進されていた。イギリスでロバート・ベーデン‐パウエルによって創立されたスカウト運動の理念を受け継ぎ、中国国内の青少年教育に取り入れ国際的で非軍事的な活動に力を入れていた童子軍運動であったが、戦争の影響によってやがて変転を余儀なくされる――。清末上海租界の外国人による少年組織から民間教育者による児童本位の活動、そして、戦時下の銃後動員まで教育と訓練の間でゆれるその足跡を、豊富な史料にもとづき克明にたどる。
千葉大学看護学研究院附属専門職連携教育研究センター特任講師(常勤)。
中国河南省生まれ。2003年来日。早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。早稲田大学教育・総合科学学術院助手,中央大学文学部兼任講師などを経て現職。
研究領域:青少年団体史,社会教育,日中比較,専門職連携,ライフヒストリー。
主な著書としては,『これからのIPE(専門職連携教育)ガイドブック』(南江堂,2023年,共著)。主な訳書として,『苦境と超越――現代中国教育評論(朱永新中国教育文集3)』(日本語,東方書店,2013年,第11章~第15章担当),『我的教師之路――中日中小学教師口述史』(中国語,2014年,教育科学出版社,第10章「我与体育的不解之縁」担当)がある。
社会活動:2010年度から2014年度まで公益財団法人国際理解支援協会「留学生が先生」プログラムの講師として,東京都中小学校を中心に国際理解について講演。2014年6月「優秀講師賞」受賞。
序 章 研究の主題
第1節 研究目的と課題
第2節 先行研究について
第3節 本論の構成
第4節 研究手法,関連資料と用語
第Ⅰ部 北京政府期における「童子軍」運動の成立と展開
第1章 上海租界におけるボーイスカウト運動の誕生
――「西童軍」(外国人ボーイスカウト)について
第1節 イギリスにおけるボーイスカウト運動の誕生とその世界的展開
第2節 上海租界における西童軍――成立とその展開
第3節 ボーイスカウト運動の中国への紹介
小 括
第2章 上海租界における「華童軍」(中国人ボーイスカウト)運動の成立
第1節 上海租界における最初の中国人スカウト隊と「中華童子探偵会」の成立
第2節 上海YMCAによるボーイスカウト活動の展開
第3節 第2回極東選手権競技大会と「中華全国童子軍協会」
第4節 上海南洋公学の童子軍活動
小 括
第3章 中国人「童子軍」運動の展開(1)――上海租界から江蘇省へ
第1節 江蘇省立第三師範附属小学校の童子義勇隊
第2節 江蘇省教育会と童子軍
第3節 上海租界華童軍会から江蘇童子軍連合会へ
――リーダーシップの交代
第4節 全国教育会連合会の決議案
――新教育運動としての「童子軍教育」
小 括
第4章 中国人「童子軍」運動の展開(2)――童子軍運動の全国的展開
第1節 武昌――文華学校と厳家麟
第2節 広州――黄憲昭の活動を中心に
第3節 北京――『清華週刊』に見る童子軍活動
第4節 天津――南開学校と章輯五
第5節 厦門――集美学校と顧拯来
第6節 全国組織の設立に向けて――中華教育改進社の年次大会
小 括
第5章 世界スカウト運動の舞台へ
――1920年代における上海・江蘇童子軍の国際交流活動
第1節 第2回国際ジャンボリーへの参加
第2節 上海南洋大学童子軍の日本訪問
――スカウト運動を通した児童国際交流
小 括
第Ⅱ部 国民政府期における「童子軍」運動――その展開の諸相
第6章 国民党による童子軍改組
――中央管轄機関の設立と運動趣旨の変遷
第1節 北伐期の国民党による童子軍改組(1926-1928年)
――その内容と特徴
第2節 南京国民政府期における管轄機関――中央訓練部による管轄期
第3節 「中国童子軍総会」の設立――三民主義に基づく指導方針の確立
小 括
第7章 学校教育における「童子軍訓練」の浸透過程
第1節 学校教育における「童子軍」科目の導入と必修化
第2節 中国童子軍総会による訓練標準の制定と教科書
第3節 課外活動の一環としての童子軍――南京市の場合
小 括
第8章 戦時下における童子軍動員
――童子軍理念の変転
第1節 童子軍に対する動員政策
第2節 国民政府による青年動員の二重構造――三民主義青年団と童子軍
第3節 戦時下童子軍の在り方に対する関係者の反省
――教育運動としての復権を目指して
小 括
終 章 研究の総括と今後の課題
あとがき
引用・参考文献一覧
索 引
英文要旨