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2025年5月に成立した「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律」は、担保権の対抗関係について、対抗要件の前後を原則としつつも、競合類型ごとに特例を設ける優劣規範を採用した。この新たな規範は、ある種のグローバル・スタンダード論の潮流の原点である米国UCC第9編と問題意識を共有している。しかし、独自色が強い制度設計を採っており違いも大きい。立法政策の違いは、どこから生じているのか。本書は、わが国の集合動産譲渡担保に相応する米国の棚卸資産担保金融に関する規律の歴史を遡り、米法の規律の基礎にある「秘匿による詐欺の法理」を探求する。この法理の直接間接の影響を踏まえる必然性の違いが、日米の立法政策の違いに与えた影響を明らかにする。
1997年早稲田大学商学部卒業。2000年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。同年度早稲田大学小野梓記念学術賞受賞。同年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程進学と同時に日本学術振興会特別研究員(DC1)。2002年早稲田大学法学部(現・法学学術院)助手、専任講師及び准教授を経て、2012年より早稲田大学法学学術院教授。
序論
第1章 動産モーゲージ法
第1節 序 説
第2節 ファイリング登記制度導入前の対抗関係の規律
第1款 序 論
第2款 1787年法
第3款 リーエン債権者との競合
第4款 目的物の善意有償取得者との競合
第3節 ファイリング登記制度の導入とその後の対抗関係の規律
第1款 1827年法及び1833年法
第2款 登記欠缺による秘匿の法理と動産モーゲージの対抗関係の一般規範
第3款 支配留保による秘匿の法理の生成
第4節 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第1款 序 説
第2款 プロシーズに関する規律と自己清算型担保取引の生成
第3款 事業の通常の過程における買主の保護
第4款 爾後取得財産条項・将来与信条項に関する規律
第5節 小 括
第2章 ファクターズ・リーエン法――NY州PPL§45
第1款 序 説
第2款 PPL§45 の成立と改正の過程
第3款 対抗関係の一般規範
第4款 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第5款 小 括
第3章 UTRA
第1節 序 説
第2節 UTRAの起草過程
第1款 Llewellynによる事前報告書
第2款 第1草案の基本設計
第3款 起草過程における修正点
第3節 UTRA成案の規律と解釈
第1款 UTRAによるトラスト・レシート担保権の概念
第2款 対抗関係の一般規範
第3款 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第4節 小 括
第4章 UCC第9編――起草過程と現行法への影響
第1節 序 説
第2節 第1期(草案1A 〜1C)の制度設計
第1款 担保権の概念と取引類型の想定
第2款 ファイリング登記制度
第3款 対抗関係の一般規範
第4款 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第1目 棚卸資産の流出局面の規律
第2目 棚卸資産の流入局面の規律
第3目 プロシーズに関する規律
第5款 小 括
第3節 第2期(草案2A 〜4A)の制度設計
第1款 担保権概念と取引類型の想定
第2款 ファイリング登記制度
第3款 対抗関係の一般規範
第4款 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第1目 棚卸資産の流出局面の規律
第2目 棚卸資産の流入局面の規律
第3目 プロシーズに関する規律
第5款 小 括
第4節 第3期(草案4B以降)の制度設計
第1款 担保権概念と取引類型の想定
第2款 ファイリング登記制度
第3款 対抗関係の一般規範
第4款 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第1目 棚卸資産の流出局面の規律
第2目 棚卸資産の流入局面の規律
第3目 プロシーズに関する規律
第5款 小 括
第5節 現行法からみた起草過程の立法論
第1款 担保権概念と取引類型の想定
第2款 ファイリング登記制度
第3款 対抗関係の一般規範
第4款 棚卸資産担保金融の運用に関する規律
第1目 棚卸資産の流出局面の規律
第2目 棚卸資産の流入局面の規律
第3目 プロシーズに関する規律
第5章 米法の史的展開からみる譲渡担保契約法
第1節 序 説
第2節 登記欠缺による秘匿の法理
第1款 米法の史的展開
第2款 わが国の新法に向けた立法論
第3節 支配留保による秘匿の法理
第1款 米法の史的展開
第2款 わが国の新法に向けた立法論
結論
あとがき
米国制定法(条文)索引
英米法判例索引
事項索引
英文要旨