大正時代に、本間久雄というオピニオンリーダーがいた。坪内逍遥のようなカリスマ的存在ではなく、島村抱月のようなスター的存在でもなかったが、文芸評論家として、歌舞伎評論家として、婦人問題評論家として、美術のコレクターとして、マスコミ界で活躍、ジャーナリストとしては、『早稲田文學』の編集主幹をつとめ、学者としては、英文学、明治文学の専門家として、早稲田大学で教鞭をとり、放送講座も受け持った。
本書は、このマルチ人間本間久雄の、もうひとつの顔、西欧文化移入者としての全仕事を、本間のあらゆる文献を詳細に分析して、紡ぎあげたものである。
第I部 本間久雄と二人の師
第1章 本間久雄―前半生とその時代
第2章 坪 内 逍 遥
第3章 島 村 抱 月
第II部 オスカー・ワイルド, エレン・ケイ, ウィリアム・モリス その思想と移入
第4章 オスカー・ワイルドと唯美主義
第5章 エレン・ケイ「恋愛論」
第6章 エレン・ケイ思想の移入
第7章 ウィリアム・モリスの社会改造論
第III部 ヨーロッパ留学と研究者への道
第8章 『滞歐印象記』
第9章 『英國近世唯美主義の研究』
第10章 世紀末のヨーロッパ、大正時代、本間久雄