ホーム > 文学・芸術, 新刊案内, 早稲田大学学術叢書, 書評に出た本・受賞した本 > オッフェンバックと大衆芸術
オペレッタの創始者としても知られるオッフェンバックの音楽は,時代やジャンルの境界を越え,あらゆる国の大衆に求められ,ミュージック・ホールやバレエ,映画などで形を変えて使われ続けた。変幻自在なオッフェンバック芸術の魅力とは何なのだろうか。モダニズム以後ミドルカルチャーの時代に至るまで,常に大衆を魅了し続けた彼の作品を再評価する。
「奥深い『知』の喜びと共に,対象への強い愛情に支えられた会心の著作にほかならない。」
2014年10月 レコード芸術
「パリでその舞台と出会い,音楽の親しみやすさと意味深なユーモアに惹かれた筆者が,オッフェンバックについて研究を重ね,その芸術の魅力を再評価する。」
2014年8月 ぶらあぼ+danza inside
第I部 19世紀パリの大衆的な劇場文化
第1章 パリの劇場政策19世紀前半〜中期
1 オペラ劇場の伝統と革新
「大劇場」の栄華と翳り
新興オペラ劇場の活動
2 「二流劇場」の活性化
劇場の誕生,苦難そして繁栄
オペレッタ誕生の舞台
メロドラムや夢幻劇の劇場
カフェ・コンセール
第2章 オペレッタの栄枯盛衰19世紀後半
1 第二帝政期の「華」?
オペレッタとは何か
フランス・オペレッタの発祥
繁栄から衰退へ?
2 オッフェンバックの新しい挑戦
1870年以後のオペレッタへの評価
「夢幻オペレッタ」創作の時代へ
3 ライヴァルの台頭
オッフェンバックの後輩たち
「教義的」オペラ・コミックへの回帰《アンゴー夫人の娘》を例に
第II部 オペレッタの本質——「滑稽」と「繰返し」の美学
第3章 オペラ・コミックの遺産
1 オペレッタの祖先としてのオペラ・コミック
「喜劇的オペラ」の変遷
「真実の描写」への志向
「滑稽」の否定
黄昏の時代からオペレッタへ
2 2つのジャンルの類似点
ジャンルの分類方法
独特の歌唱形式
アリエットからロンドへ
ヴォードヴィルとの関係
3 歌唱形式の美学的特徴
音楽的な時間とは
各歌唱形式とドラマ的効果
循環する時間《美しきエレーヌ》と《ジェロルステイン大公妃殿下》を例に
「夢幻オペレッタ」作品の有節歌曲
第4章 音楽の「滑稽」その美学的価値の発見
1 音楽模倣論と喜劇的描
18世紀末の音楽模倣論とオペラ・コミック
19世紀以後の「音楽と対象」
オペレッタの笑いへ
2 ユーモアと音楽
ユーモアの美学とオペレッタ
音楽的ユーモアの理論
3 音楽的ユーモアの例
アプローチの方法
相対的音楽ユーモア
絶対的音楽ユーモア
身体的な音楽の喜劇性
第III部 オッフェンバックの「夢幻オペレッタ」——その芸術性と社会的意義
第5章 イメージの源流としてのファンタジー
1 オペラの超現実をめぐって
ファンタジーの起源
メルヴェイユーへの批判
2 超現実への支持
真実の描写とメルヴェイユー
「寓話的なもの」への価値観
コント,メルヴェイユー,バレエ
第6章 夢幻劇(フェリー)とは何か
1 夢幻劇の原点としてのメロドラム
メロドラムの起源とその特徴
想像され得る音楽
2 夢幻劇の特徴
メロドラムと夢幻劇
夢幻劇の印刷台本
歌唱部分について
(1)『青ひげ』と『500人の悪魔』
(2)歌唱部分に見られる他ジャンルの要素
(3)替え歌(パロディ)について
オーケストラについて
「夢幻オペレッタ」へ
第7章 「夢幻オペレッタ」の上演史——第二帝政から第三共和政の狭間で
1 「夢幻オペレッタ」創作の背景
夢幻劇の舞台,ゲテ座
夢幻劇の復活
2 《にんじん王》——「夢幻オペレッタ」第1作
創作の経緯
初演時の豪華な舞台演出
観客の反響と批評家による評価
出演した歌手と俳優
3 《地獄のオルフェウス》過去のヒット作の改作版
改作の経緯
オペレッタから「オペラ」へ
4 《月旅行》常識を覆す「未来派オペラ」
斬新な舞台演出
音楽的な特殊性
5 オペラの潮流と「夢幻オペレッタ」への評価
自然主義の台頭
「超現実」への批判
ゾラの影響
遺作《ホフマン物語》
第8章《にんじん王》の世界——台本と音楽に見られる多様性
1 台本の特徴
夢幻劇らしい「幻想性」
(1)登場人物とあらすじ
(2)舞台設定と演出
(3)ホフマン文学との関わり
19世紀後半特有の「現在性」
(1)社会構造と登場人物
(2)科学技術と自然科学
「ボナパルティスト的」な風刺
2 初演版の「謎」
出版台本とヴォーカルスコア
2つの出版台本に隠された意味
3 音楽の夢幻劇らしさ
未知のオーケストラ部分
「キリビビ」の場面を例に
4 音楽が織りなすドラマトゥルギー
オペレッタの分析方法
(1)「音楽モティーフ」とは何か
(2)2つの「時間」の質
《にんじん王》の音楽とドラマ
(1)ドラマティックな時間
(2)音楽的な時間
(3)折衷主義的な手法
5 音楽の「グロテスク」
相対的な視点から
絶対的な視点から
音楽的ユーモアの芸術
結 論
「風刺的」作品としての《にんじん王》
「ミドルカルチャー」の誕生
おわりに
「気晴らし」の芸術
後のオペラ史における意味
付 録
第Ⅱ部参考資料
第Ⅲ部参考資料
譜例集_
譜例集
参考文献
主要参考文献
使用した台本,楽譜,19世紀の雑誌,図版など
あとがき
索 引
英文要旨