19世紀末、スペインのカタルーニャ地方で興った建築運動、〈カタルーニャ・ムダルニズマ〉。同運動を代表する人物として、わが国ではアントニオ・ガウディが著名である。しかし、ガウディ以外にも素晴らしい仕事を残した同運動の建築家たちは大勢いる。日本ではいまだ知名度の低いかれらのすばらしい仕事の数々を、ガウディ研究の第一人者が40年にわたって現地を訪れ、撮影しつづけてきた貴重な写真とともに紹介する。
1946年、熊本市生まれ。建築家。早稲田大学理工学術院教授。工学博士。
1969年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。
1972年、早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了。
1972~87年、早稲田大学池原義郎研究室個人助手。
1977~78年、スペイン政府給費生としてバルセロナ建築大学ガウディ講座留学。
1987~95年、室蘭工業大学助教授。
1995年~現在、早稲田大学教授。
1990年、「アントニオ・ガウディ・イ・コルネットに関する一連の研究」で日本建築学会賞受賞。
2005年、《行燈旅館》で日本建築学会作品選奨受賞。
2008年、《実験装置masia2008》で第22回村野藤吾賞受賞。
著書に『アントニオ・ガウディ論』、『ガウディの言葉』、『新建築学体系6 建築造形論』、『図説 ガウディ――地中海が生んだ天才建築家』、『もっと知りたいガウディ――生涯と作品』等、訳書に『ガウディ――芸術的、宗教的ヴィジョン』、『ガウディの作品――芸術と建築』等多数。
建築作品に《ナトゥーラの眼・こだま幼稚園》、《実験装置masia2008》、《行燈旅館》、《早稲田大学喜久井町キャンパス研究棟群》、《明善寺》、《メディカルコートあやめ池》、《中野の集合住宅――幹線道路沿いの白い空隙》、《桜新町の家》等多数。
はじめに――本書を書くにあたって
第1章 カタルーニャ・バルセロナの街へようこそ――街を歩く
第2章 タラゴナ
――街々の建築を造形・装飾した異才の建築家 ジュゼップ・ジュジョール・イ・ジーベルト
1 ガウディとジュジョール
2 タラゴナでの最初の仕事――《労働者協会劇場》(1908)
3 表面と装飾――《ティエンダ・マニャックの店舗デザイン》(1911)
4 《カサ・ボファルール》(1914)と《カサ・ネグレ》(1915)のファサディズム
5 空間の皮膜としてのフォルム
――《トーレ・デ・ラ・クルー(十字架の家)》(1913)と《カサ・プラネリェス》(1923)
6 結語
第3章 バルセロナ
――〈カタルーニャ・ムダルニズマ〉を駆動させた建築家 ルイス・ドメーネック・イ・モンタネル
1 新しい建築様式を巡って(19世紀後半〜20世紀初頭)
2 ドメーネックの「国民的建築をもとめて」 (1878)
3 ルイス・ドメーネック・イ・モンタネルの4つの建築作品(1881-1912)
4 結語
第4章 ジロナ
――中世都市の近代化を進めた建築家 ラファエル・マゾー・イ・バレンティー
1 中世都市ジロナについて
2 マゾーの人となりについて
3 マゾーの旅行――ヨーロッパ中央における近代建築の胎動を求めて
4 ラファエル・マゾーの建築作品の展開
5 結語
第5章 タラッザ
――繊維業で栄えた街の建築家 ルイス・ムンクニル・イ・パレリャータ
1 はじめに――ルイス・ムンクニルについて
2 タラッザについての略史
3 近代化に向けて
4 折衷という理念における3つの様態
5 結語
第6章 ガウディ試論
――日本に初めてガウディを紹介した建築家 今井 兼次
1 今井のガウディ言説
2 「統一性をもったコンプレキシティ」表現の誕生のファサードの彫像制作
――<装飾彫刻>とその制作方法
3 ガウディ論の系譜における外面的形態に関する解釈
4 「激しさ」に込めた今井兼次の作家研究の方法――スピノザの方法にならって
5 ガウディを特質づける諸作品について