チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の風貌のなかでも、ひときわ大きな特徴をなしている部分がある。眼である。あの挑みかかるような大きな眼、異様なばかりに張り詰めた眼の奥には、どこかこの世ならぬ風景がありありと映っていたのだろうか。
「デヴィド・コパフィールド」「クリスマス・キャロル」「オリバー・トゥイスト」など数々の名作を生みだした天才作家。その初期から中期、最晩年に至るまでの試行と試練を、ディケンズ研究の第一人者がたどる。本書末尾では付録として、明治期日本におけるディケンズ受容の実態を、翻訳文の推移と重ねながら紹介する。
19世紀英文学ファン、必読の一冊。
早稲田大学文学学術院教授。
1950年生れ。埼玉県在住。19世紀イギリス文学を専門とするかたわら,シェイクスピアや日本近代文学にも多大の関心をもつ。
主な著書 『子供たちのロンドン』(小澤書店,1997年),『拾われた猫と犬』(同,2000年),『はじめてのシェイクスピア』(王国社,2002年),『シェイクスピアの遺言書』(同,2018年),『ブロブディンナグの住人たち』(彩流社,2018年),『英国の街を歩く』(同,2019年)など。
主な訳書 T. L. ピイコック『夢魔邸』(旺史社,1989年),S. タートルドブ『じじバカ――世界でいちばん孫が好き』(サンマーク出版,2002年),C. ディケンズ『英国紳士サミュエル・ピクウィク氏の冒険』(未知谷,2005年),A. テニソン『イノック・アーデンの悲劇・他』(大阪教育図書,2018年)など。
一 作家の誕生――ディケンズ小伝
二 ピクウィク旋風
三 クリスマスの霊力
四 『デヴィド・コパフィールド』について
五 ディケンズと公開朗読
六 公開朗読の一背景
七 朗読「サイクスとナンシー」の謎
八 『エドウィン・ドルードの謎』における謎
(付)明治期のディケンズ翻訳
あとがき