ホーム > 新刊案内, 早稲田大学エウプラクシス叢書, 書評に出た本・受賞した本, 歴史・哲学 > 李贄
儒仏道三教を融合し、小説や戯曲を愛好し、暗雲たちこめる明代末期の朝野を駆け抜けた異端思想家、李贄(1527-1602)。その思索は伝統に根ざしながら、中国思想の新たな地平を切り拓くものであった。言葉への盲目的服従は、人を束縛し、本来の「心」を失わせる――彼は言葉の機能を問い続けた。歴史、政治、学びの場、文学の世界、死生観をめぐって、李贄の言葉の旅を辿る。
1982年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科東洋哲学専攻博士後期課程修了、博士(文学)。現在、浙江師範大学外国語学院副教授。専門は中国哲学(宋明理学)。
序 章 孤絶と邂逅の思想家――その生涯と源流
一 異端者の生涯――李贄略伝
二 〈伝わらなさ〉をめぐる問い――本書の問題意識
三 従来の研究
第一章 言葉は如何に機能するか
一 言葉という陥穽――言語のよそよそしさ
二 非識字者の倫理性
三 読むことと学ぶこと
四 書くことと教えること
五 時と出逢う言葉
第二章 師はどこにいるのか――求道者の学び
一 師になるということ――自任への批判
二 弟子になるということ――好学から奔走へ
第三章 政治の場での語り――弾劾と諫言
一 弾劾と排他性――君子と小人
二 諌言の限界
三 君臣の離間を超えて
四 万暦中期の弾劾と諌言
第四章 他者によりそう――言葉における近さ
一 「邇言」のイメージ
二 統治者と「邇言」
三 聖人のパースペクティブ
四 実践の階梯
第五章 詩文に託されたもの――その社会性をめぐって
一 物語を如何に読むか
二 「文学」に生きた人々
第六章 自己を語る言葉――歴史への自己投影
一 歴史への自己投影
二 情況という重力
第七章 死を語る言葉――死にゆく自己
一 死を恐れることと名を好むこと
二 死を無化する原理――如何に死への怖れを超えるか
三 死を前にした実践――死に意味を持たせること
四 死者としての自己――書物に潜む死者
終 章 自由か、束縛か
あとがき
人名索引
書名索引
英文サマリー