ホーム > 新刊案内, 早稲田大学エウプラクシス叢書, 社会・教育 > 難民問題の「恒久的解決策」を問い直す
紛争や迫害により故郷を追われた人は2022年に1億人を超え、難民の数はこの10年間で2.5倍となった。国連機関は「恒久的解決策」の実現を目標に掲げ最前線の現場で人道支援に奔走しているが、なぜ恒久的な解決にむかうことなく避難生活を強いられ続けているのだろうか。本書はこの問題意識に基づき人間の安全保障の視座から恒久的解決策を問い直すものである。世界最多の難民出身国であるシリアの難民問題と、世界最多の難民受け入れ国のトルコを含む三つの一次庇護国を事例として分析していく。脆弱性の高い難民の保護の緊急性や重要性にくわえ、能力強化、それも難民受け入れ国や社会との社会的結束を築き生活を再建するための能力強化の必要性と可能性を提示する。
早稲田大学地域・地域間研究機構アジア・ヒューマン・コミュニティ研究所招聘研究員。1980年生まれ。2021年、早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了(社会科学博士)。これまで特定非営利活動法人(認定NPO)パレスチナ子どものキャンペーン理事や東京電機大学未来科学部非常勤講師を務めた他、独立行政法人国際協力機構(JICA)在職中。専門は国際関係論、国際協力論。
まえがき
あらすじ
序 章 難民問題および難民支援の諸相
第1節 国家により管理される難民
第2節 難民と人間の安全保障――保護と能力強化
第3節 小 括
第1章 シリア危機と難民問題
第1節 「アラブの春」を源泉とするシリア危機
第2節 悪化し続ける人道状況
第3節 小 括
第2章 トルコにおけるシリア難民支援
第1節 はじめに
第2節 難民受け入れ国としてのトルコ
第3節 難民支援における教育の役割
第4節 難民支援再考
第5節 小 括
第3章 レバノンにおけるパレスチナ難民支援
第1節 難民受け入れの歴史
第2節 難民問題の構造
第3節 難民支援における教育の役割
第4節 難民支援再考
第5節 小 括
第4章 レバノンにおけるシリア難民支援
第1節 はじめに
第2節 難民受け入れ国としてのレバノン
第3節 難民支援における教育の役割
第4節 難民支援再考
第5節 小 括
第5章 ヨルダンにおけるシリア難民支援
第1節 はじめに
第2節 難民受け入れ国としてのヨルダン
第3節 難民支援における廃棄物管理の役割
第4節 難民支援再考
第5節 小 括
第6章 国際難民保護レジームの考察
第1節 レジームの現状と課題
第2節 レジームの目標――恒久的解決策
第3節 難民支援再考
第4節 小 括
終 章 恒久的解決策を問い直すことでみえてきたもの
第1 節 本研究が導き出した理論的貢献
第2 節 本研究から得られた理論的な示唆
第3 節 本研究から得られた実務的な示唆
第4 節 むすび
追録―ウクライナ難民問題に寄せて―
あとがき
参考文献
索 引
英文要旨