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ライトノベルのストラテジー
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ライトノベルとは、その表現がパターンの組み合わせによって構成されていることが自覚された小説である。この自覚は、物語やキャラクターを独創的・唯一的なものとして捉えることを困難にしてしまう。しかしゼロ年代(2000年~2009年)頃におけるライトノベル作品には、表現がパターンの組み合わせであることを引き受けた上で、それでも物語やキャラクターを唯一的なものとして描こうとする多様な試みが認められる。その萌芽を示した『スレイヤーズ』、そして『涼宮ハルヒの憂鬱』『キノの旅』『All You Need Is Kill』『とある魔術の禁書目録』『僕は友達が少ない』『ソードアート・オンライン』というゼロ年代を代表する諸作品を詳細に読解し、それぞれのストラテジーを明らかにする。
秋田工業高等専門学校講師。
2020年、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。
早稲田大学教育学部助教等を経て、2024年より現職。
専門は現代サブカルチャー、近代文学。
序 章 ライトノベルのストラテジー
1 ライトノベルの認識の枠組み
2 近代文学の認識の枠組み
3 近代のエピステーメー
4 構造主義的な小説
5 相対化の問題
6 シミュラークルの単独性
7 本書の構成
第一章 類型性への抵抗──神坂一『スレイヤーズ』論
はじめに
1 パターンに関する自己言及
2 『スレイヤーズ』の物語構造
3 相対化と没入
4 パターンからの逸脱
5 パターンの中の抵抗
おわりに
第二章 交換不可能な大衆──谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』論
はじめに
1 ハルヒの「憂鬱」とは何か
2 キョンの非日常への欲望
3 「馴染み」のものの肯定
4 語りえないものとしての他者
5 二つの肯定の差異
おわりに
第三章 世界の中の旅人──時雨沢恵一『キノの旅』論
はじめに
1 旅人と住人
2 何者でもない自己
3 生存と犠牲
4 固有名の反復
おわりに
第四章 孤独をわかちあうこと──桜坂洋『All You Need Is Kill』論
はじめに
1 ゲーム的相対化
2 反復の反復
3 反復された決断
4 単独的な経験の共有
おわりに
第五章 シミュラークルの主人公──鎌池和馬『とある魔術の禁インデックス書目録』論
はじめに
1 インデックスをめぐる複数の物語
2 単独的な存在としてのインデックス
3 主人公とヒロイン
4 クローンの可塑性
5 たった一人の女の子
おわりに
第六章 日常と変化──平坂読『僕は友達が少ない』論
はじめに
1 日常系とは何か
2 反復と変化
3 物語的な変化
4 反復における変化
5 決定的な変化
おわりに
第七章 ライトノベルにおける現実──川原礫『ソードアート・オンライン』論
はじめに
1 表象的リアリズム
2 否定神学的リアリズムと郵便的リアリズム
3 現実としての仮想世界
4 単独的世界の複数性
おわりに
終 章 ライトノベル・単独性・キャラクター
1 問題と諸応答
2 単独性の再検討
3 キャラクター論との関係
4 現代社会における相対化の問題
5 一〇年代のライトノベル
あとがき
初出一覧
索 引
英文要旨