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写真:プレデール立地論と地政学
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プレデール立地論と地政学
経済のグローバル化と国家の限界

水野 忠尚 著

A5判 262ページ

本体 3,500円+税(2018年3月1日発売)

ISBN:978-4-657-18801-4

TSUTAYA
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e-hon
紀伊國屋書店
MARUZEN & JUNKUDO
セブンネット
楽天ブックス

作品概要

 イギリスのEU離脱、ロシアのクリミヤ半島問題、ウクライナの混乱、シリアをはじめとする中東の混乱、中国の強引な海洋進出、アメリカ・トランプ大統領の誕生、北朝鮮の核問題など、世界の安全保障をめぐる政治体制は不安定化している。
 一方、経済面においても、リーマン・ショック、中国経済の減速などに象徴されるように、世界経済はグローバル化の進展とともに不透明感を増している。
 こうした混迷する世界政治と世界経済に秩序をもたらす手がかりを与えるのが、アンドレアス・プレデール (1893-1974) が提示した立地論を基礎とした世界経済論である。プレデールは、経済空間と政治(国家)空間の範囲の違いから生ずる諸問題を検討し、経済効率を損なわないためには政治の調整、すなわち国際的な政治的統合が必要であると主張したドイツの経済学者である。その経済思想は、EUなど戦後のヨーロッパ統合のなかにも貫かれている。しかし、有名な学者であるにもかかわらず、日本においてはいま一つ知名度が低い。
 本書は、プレデールに関する本邦初の本格的研究であり、混迷する現代に秩序をもたらす手がかりを見出そうとするものである。

著者プロフィール(編者、訳者等含む)

1946年、東京都に生まれる。1970年、一橋大学経済学部を卒業後、株式会社日本興業銀行に入行。1973年より1975年まで、同行よりドイツ連邦共和国ハンブルク大学に行費留学。2001年、同行を退行し、2012年までDIAMアセットマネジメント株式会社監査役等を歴任。2008年早稲田大学大学院経済学研究科に入学、2016年博士課程を修了。博士(経済学)。専攻は経済思想。
主な翻訳:『世界経済のダイナミズムと貿易――国際貿易理論の新しい方向への出発点』アルフォンス・レンパー著(2003年、私家版)。

目次など

はじめに

序 章 プレデールとは何者か
 第1節 本書の目的      
 第2節 プレデールの略歴とキール世界経済研究所
 第3節 プレデールの統合思想の背景  
 第4節 プレデール理論の概要               
 第5節 本書の構成                    

第1章 テューネン孤立国の社会モデル――合理的な農業生産と孤立国の社会
 第1節 孤立国の概要
 第2節 交通の役割と孤立国の拡張      
 第3節 工業生産に対する課税効果   
 第4節 孤立国の社会における分配の問題
 第5節 テューネンの理想社会と現実への処方箋
 第6節 合理性に基づいた社会
  
第2章 リストの立地空間と世界連邦
 第1節 領邦国家から国民国家、そして世界連邦へ
 第2節 普遍的な経済合理性と歴史から生まれる国民経済学
 第3節 経済発展段階論と重商主義批判
 第4節 政策と政治空間
 第5節 リストにとっての経済空間
 第6節 交通の発達と貿易
 第7節 リストの最終目標

第3章 ヴェーバーの経済地理学批判と現実的理論
 第1節 『工業立地論』と経済発展     
 第2節 ヴェーバーの経済地理学批判 
 第3節 ヴェーバー純粋理論に対する批判と現実的理論
 第4節 現実的理論への手掛かり 
 第5節 純粋理論と現実的理論

第4章 プレデールのヴェーバー批判とレッシュの見方――補完理論としての立地論と国境の扱い
 第1節 古典的工業立地論としてのヴェーバー
 第2節 ヴェーバーの貿易政策論
 第3節 リストの世界連邦とヴェーバーの欧州生産力の連邦
 第4節 プレデールとレッシュの評価
  
第5章 国際分業をめぐるプレデールとハーバラー、レオンティエフとの違い
 第1節 プレデールとハーバラーの議論
 第2節 レオンティエフとの視点の違い
 第3節 2つの流れに分かれる立地論  
  
第6章 プレデールの経済空間と政治空間の統合理論
 第1節 戦前と戦後の連続性
 第2節 プレデール理論に影響を与えた思想
 第3節 経済空間と国家空間
 第4節 プレデール理論体系の集大成Außenwirtschaft(『世界経済論』)
 第5節 「世界経済の集中の極」における欧州の国家空間  
 第6節 経済空間の連続性

第7章 ナチス広域経済圏構想におけるプレデール
 第1節 世界経済の行き詰まり
 第2節 ナチス大空間経済構想
 第3節 フンク声明とアウタルキー政策を補完する貿易・決済制度
 第4節 共鳴する思想と中立性   
    
第8章 プレデール立地論と地政学――戦時下の日本における誤解
 第1節 立地論とアウタルキー
 第2節 戦時下の日本における誤解
 第3節 学問としての地政学との近似性
 第4節 時代に流された日本の立地論   

第9章 プレデールの欧州統合論
 第1節 ドイツ経済思想における欧州統合   
 第2節 プレデールの欧州統合論と経済政策    
 第3節 プレデールの空間認識の独自性    
 第4節 現実の欧州統合       

第10章 プレデール理論の残された課題
 第1節 世界経済の環境変化
 第2節 プレデール後継者たちの理論展開    
 第3節 ゆらぐ第3の「集中の極」の捉え方――アジアの地理的空間
 第4節 レンパーによるプレデール理論の解釈
 第5節 プレデール理論の限界と課題    

終 章 本書のまとめ
 第1節 立地の合理性と国民国家                
 第2節 欧州生産力の連邦と国家という2つの視点  
 第3節 プレデールの空間統合理論 
 第4節 プレデール理論の評価と課題
 第5節 現実との接点

おわりに
参考文献
人名索引            
事項索引
英文要旨

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