ドイツ軍部の政治史〔増補版〕室 潔 四六判 262ページ 本体 2,000円+税 ISBN:978-4-657-07920-6 |
ワイマール期ドイツの議会と政党は、高邁な理想を掲げながら議会制民主主義が空洞化し、機能不全に陥ったのはなぜか。ナチス政権は、なぜ成立したのか。従来は論じられていない議会政治と政党政治の見なれぬ素顔を描いて、ドイツが破局を迎えた最大の原因を独自の視点から探る。
第一章 最高統帥部(OHL)の独裁
一 ファルケンハインからヒンデンブルクへ
ファルケンハインの西部戦線偏重
ファルケンハインとヒンデンブルク
「その日暮しの戦略」
一九一六年夏の敗戦
二 宰相更迭
ヒンデンブルク綱領
無制限潜水艦戦の実施
「人は宰相を嘲笑するようになった」
「祖国のための補助勤務法」
プロイセン下院選挙法改正問題
三 国会多数派の果した役割
「国民に譲歩すれば転覆に至る」
ベートマン=ホルヴェークの危惧
国民自由党の方向転換
錯綜する対立関係
軍部介入の口実
バオアーとエルツベルガー
中央党の孤立
軍部と中央党の合作劇第一作
四 最高統帥部の独裁
ルーデンドルフの政治的資質
「最高統帥部の軍事独裁」
一九一八年一月のストライキ
一九一八年春の大攻勢
無視されたバーデン公マックスの助言
「隠然たる独裁」の終り
第二章 カップ=リュトヴィッツ一揆―ラインハルト辞任の意味―
一 講和条約をめぐる確執
「平時の軍における指揮権並びに兵士評議会の地位に関する暫定規則」
暫定国防軍法
初代国防相ノスケ
グレーナーの果した役割
「ノスケ独裁」構想
ノスケとラインハルトの主導権掌握
講和条約発効と兵力の削減
二 もう一つの対立
「無計画な叛乱」
ノスケ=ラインハルト路線対グレーナー=ゼークト路線
グレーナーに面罵されたラインハルト
階級章廃止の是非
「暫定規則」をめぐるグレーナー、ラインハルトの確執
「革命の不当利得者」
「新しい共和国には新しい共和国の軍隊を」
三 ラインハルト辞任の意味
ゼークトの粛軍
国防軍の政治的中立
ノスケの見識
ラインハルトとクラオゼヴィッツ
ラインハルトとノスケ
ノスケ問責の意味
第三章 一九二三年の危機とゼークトの策謀
一 政権奪取の意図
シュトレーゼマンは「ドイツの首相」か?
政権奪取の意思
ゼークトの『政府声明』と『政府綱領』
二 非常事態宣言
バイエルンとの争い
喜色満面のゼークト
つくられた準内戦状況
「ドラマならば第三幕に登場する」
三 シュトレーゼマンの抵抗
準内戦状況の消滅
議会政治家シュトレーゼマンのしたたかさ
巧妙なザクセン問題処理
先手をとられた軍部
四 ミュンヘン一揆以後
軍部の意気消沈
ゼークトの新たな野心
ゼークトの不運
「ゼークトは見るからに不満気だ」
ゼークトの凋落
ゼークト体制からヒンデンブルク体制へ
第四章 ヒンデンブルク大統領と国防軍―相対的安定期からワイマール末期へ―
一 ヒンデンブルクの大統領就任
シュトレーゼマンのヒンデンブルク擁立
「非政治的人間」ヒンデンブルク
国防軍政治中枢の拡充
シュライヒャー人脈の形成
「共和国は我々の欲するところにそってのみつくりあげられる」
二 議会と政党の反軍攻勢
ゼークト単独の辞任
「いかなる共和国も君主主義的な軍隊に満足することはできない」
海軍の不祥事とゲスラーの辞任
装甲巡洋艦建造問題
反軍攻勢の弱点
「国防相の指揮権は虚構」
浅手にすぎぬゼークトの辞任
国防相官房の設置
切札としての大統領職権
三 ブリューニング内閣
シュトレーゼマンの死
軍部の倒閣運動
二股かけたブリューニング
ヘルマン・ミュラー内閣に対する中央党の敵意
軍部と中央党の合作劇第二作
ナチスの大躍進
ブリューニング失脚の原因
四 ナチス馴致の失敗
ナチスに対する軍部の態度
ナチス懐柔工作の失敗
シュライヒャーの豹変
「パーペンは帽子にすぎぬ」
プロイセン問題の解決
対ナチス強硬策としての国会連続解散
シュライヒャーのラジオ演説
シュライヒャーの演じた茶番
補論―人物点描―
グスタフ・シュトレーゼマン―ヨーロッパ統合の先駆け?―
ゼークトの失脚
裏切られたシュライヒャー