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現代中国の政治体制は、前近代から続く歴史の流れのなかで、辛亥革命や国共内戦を経て次第に形成されてきた。故に、前近代中国の皇帝支配体制に目を向けて、その実態を把握することは、現代の政治体制の形成過程とその内容をより深く理解し、かつ将来的な課題に対応していくための基盤として必要不可欠である。本書では、前近代中国の皇帝支配体制の実態を明らかにすることを目的に、後漢期の政治制度の構造を重点的に論考する。
「本書はより詳しく精緻に、生き生きと、立体的に、後漢の皇帝政治を解き明かした。」『中国史研究動態』2014年第5期(2014年10月)(中国社会科学院歴史研究所)に書評掲載。評者:凌文超氏(中国社会科学院歴史研究所助理研究員)
「本書の成果は後漢の政治史・制度史はもとより、前近代中国の皇帝支配体制の変遷を追究する上で重要な位置づけをもつことは間違いない。」『史学雑誌』第124編第7号(2015年7月)(公益財団法人史学会)に書評掲載。評者:福永善隆氏(鹿児島大学学術研究院法文教育学域法文学系准教授)
序 章 漢王朝の皇帝支配体制と後漢時代1
は じ め に
第一節 先行研究の展開
一 黎 明 期
二 継 承 期
三 再検討期
四 先学の所論の要点
第二節 残された検討課題
第三節 本書の構成
第一章 後漢における宦官の制度的基盤と尚書台
はじめに
第一節 宦官の制度的基盤と「省尚書事」
第二節 「省尚書事」の再検討
一 「漢家の舊典」の内容
二 宣帝期以降の前漢の侍中・中常侍と「省尚書事」
第三節 後漢の中常侍と「顧問應對」
一 「顧問應對」の内容
二 後漢洛陽城の基本構造と諸官の発言の場
第四節 宦官の政治活動とその制度的基盤
お わ り に
第二章 後漢における外戚の制度的基盤と尚書台――梁冀政権を事例として
は じ め に
第一節 「跋扈将軍」の権勢
第二節 桓帝の擁立と「録尚書事」
一 「録尚書事」と「領尚書事」
二 「録尚書事」と「師傅の官」
三 「録尚書事」の内容
第三節 元嘉元年の殊典賜与と「平尚書事」
一 「平尚書事」の内容
二 「平尚書事」と殊典
第四節 梁冀政権の崩壊とその制度的基盤
第五節 外戚の制度的基盤
お わ り に
第三章 「三公形骸化説」の再検討――『昌言』法誡篇の解釈をめぐって
は じ め に
第一節 「三公形骸化説」と『昌言』法誡篇
第二節 法誡篇の再検討
一 「臺閣」の解釈[Ⅰ]
二 「臺閣」の解釈[Ⅱ]
三 「臺閣」の解釈[Ⅲ]
四 「臺閣」の解釈[Ⅳ]
五 法誡篇の解釈
第三節 三公の職務と法誡篇
第四節 三公に対する皇帝の認識
お わ り に
第四章 後漢における公府・将軍府と府主
は じ め に
第一節 公府・将軍府による政策案の作成・審議
一 政策案の審議と朝堂・百官朝会殿
二 政策案の作成と官衙・百官朝会殿
第二節 三公府による政策案の事前審査
第三節 尚書台と政策案の作成・審議の関係
一 政策案の審議との関係
二 政策案の作成との関係
第四節 公府・将軍府による政策案の作成・審議の淵源
一 前漢武帝期における政策案の作成・審議
二 霍氏政権期における政策案の作成・審議
三 霍氏誅滅後における政策案の作成・審議
第五節 皇帝の決裁と府主の役割
お わ り に
第五章 政策形成と文書伝達――後漢尚書台の機能をめぐって
は じ め に
第一節 上奏文の伝達
一 上奏文の作成と上奏
二 上奏文の伝達と尚書台
第二節 上奏文の決裁と詔の伝達
一 上奏文の審議と決裁
二 決裁の授受と尚書台の官衙の位置 ¥
三 詔の起草と伝達
第三節 政策形成・文書伝達の復元
第四節 後漢における尚書台の機能
お わ り に
第六章 後漢洛陽城における皇帝・諸官の政治空間
は じ め に
第一節 皇帝・皇太后の執務場所と生活空間
第二節 諸官の執務場所とその役割
一 諸官の執務場所と後漢洛陽城
二 侍中・中常侍・大夫・議郎の役割
第三節 後漢政治制度の基本構造
第四節 後漢政治制度の形成過程
一 武帝期以降の長安城と諸官の執務場所
二 側近官の縮小再編成と政治制度の改編
お わ り に
第七章 政治空間よりみた後漢の外戚輔政――後漢皇帝支配体制の限界をめぐって
は じ め に
第一節 外戚と「輔政」
第二節 内戚輔政から外戚輔政へ
一 内戚輔政の挫折
二 外戚輔政の萌芽
第三節 外戚政権と政治空間
一 竇氏政権と後漢洛陽城
二 竇氏誅滅と「改編」
三 「改編」以後の外戚政権
〔Ⅰ〕鄧氏政権
〔Ⅱ〕梁氏政権
〔Ⅲ〕「改編」以後の外戚政権と後漢洛陽城
第四節 後漢における皇帝支配体制の限界
一 外戚の就任官とその執務場所の変遷
二 後漢皇帝支配体制とその限界
お わ り に
終 章 漢王朝の皇帝支配体制の特色とその展開
は じ め に
第一節 本書で検証された内容
一 宦官の制度的基盤について
二 外戚の制度的基盤について
三 「三公形骸化説」について
四 公府・将軍府の機能と府主の役割について
五 尚書台の機能について
六 後漢の政治制度の基本構造とその形成過程について
七 後漢の皇帝支配体制の限界について
第二節 漢王朝の皇帝支配体制の特色と曹魏における継承・発展
補 論 後漢における「内朝官」の解体と九卿の再編――少府・光禄勲を中心として
は じ め に
第一節 「内朝官」と「職屬」・「文屬」
第二節 後漢洛陽城と少府の属官
一 少府に「職屬」する属官とその執務場所
二 少府に「文屬」する属官とその執務場所
〔Ⅰ〕士人専任の属官
〔Ⅱ〕宦官専任の属官
第三節 後漢洛陽城と光禄勲の属官
一 光禄勲に「職屬」する属官とその執務場所
二 光禄勲に「文屬」する属官とその執務場所
第四節 「職屬」・「文屬」の区別とその基準
第五節 「内朝官」の改編とその制度的な背景
お わ り に
引用参考文献一覧
初 出 一 覧
あ と が き
英 文 要 旨
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