ホーム > 政治経済・法律・ビジネス, 新刊案内, 早稲田大学学術叢書 > 貧困と格差のミクロ・データ分析
近年、先進諸国における「貧困」と「格差」への社会的な関心が高まっている。本書では日本の貧困や所得格差の現状について、政府統計調査などのミクロ・データ(個票データ)をもとに実証的に分析。これまで主な分析対象とされてきた政府統計調査の集計データだけでは導き出されてこなかった、リスク要因の関連性が明らかとなる。また、貧困による影響のひとつである犯罪との関連、新型コロナウイルス感染症拡大の影響について分析する。貧困層・低所得層の実態とは。貧困対策を考えるうえでの必読書。
1983年東京大学経済学部卒業、1994年米国ウィスコンシン大学マディソン校Ph.D. (Economics)。東京都立大学経済学部助手、筑波大学社会工学系助手・講師を経て、2001年早稲田大学政治経済学部(現・政治経済学術院)専任講師、2002年助教授、2007年教授を経て、2022年早稲田大学名誉教授
はじめに
序 章 データによる貧困へのアプローチ
1 貧困の概念
2 相対的貧困
3 日本の貧困に関する研究
4 米国における貧困の概観
5 本書での分析
第Ⅰ部 家族,教育と貧困の分析
第1章 世帯属性と貧困の要因──「国民生活基礎調査」を基に
1 はじめに
2 世帯属性と貧困
3 世帯所得の要因分析
4 個人所得の要因分析
5 まとめ
第2章 貧困と生活状況──「国民生活基礎調査」「全国消費実態調査」による分析
1 はじめに
2 家族類型と生活状況
3 貧困の生活状況への影響の計量分析
4 まとめ
第3章 就労と貧困──「就業構造基本調査」による分析
1 はじめに
2 非正規雇用
3 無職
4 母子世帯
5 介護と就業
6 高齢者
7 まとめ
第4章 大学非常勤講師──「学校教員統計調査」の分析から
1 はじめに
2 本務のない非常勤講師の実態
3 文科系研究者アンケート調査による本務のない非常勤講師の実情
4 「就業構造基本調査」による非正規大学教員の収入
5 まとめ
第5章 世代間での所得格差の連鎖
1 はじめに
2 経済学分野における世代間所得連鎖の推定方法
3 日本での世代間所得連鎖
4 世代間所得連鎖の経路
5 まとめ
補論 世代間所得連鎖の弾力性の推定方法
第Ⅱ部 犯罪と経済的要因の分析
第6章 経済学における犯罪と経済的要因の実証研究
1 はじめに
2 集計データによる実証研究
3 個票データによる実証研究
4 犯罪に影響する要因
5 分析における留意点
6 まとめ
第7章 刑務所収容者における犯罪と経済的要因の関連
──「矯正統計」による分析
1 はじめに
2 受刑者の属性
3 受刑者の刑期等の状況
4 犯罪と経済的背景との関連の分析
5 収容者の類型による差異の検証
6 まとめ
補遺 罪名による犯罪類型の分類
第8章 少年鑑別所収容者における少年非行と経済的要因の関連
──「少年矯正統計」による分析
1 はじめに
2 少年鑑別所収容者の属性と家庭環境
3 収容者の非行状況等
4 貧困,虐待と少年非行の関連の分析
5 まとめ
第Ⅲ部 新型コロナウイルス感染症による低所得層への影響
第9章 新型コロナウイルス感染症拡大と就労・収入──統計データと学術研究から
1 はじめに
2 統計データからの知見
3 各種のアンケート調査からの知見
4 日本の研究からの知見
5 海外の研究からの知見
6 まとめ
第10章 新型コロナウイルス感染症拡大による環境変化と所得水準
──内閣府調査による分析
1 はじめに
2 内閣府による調査データ
3 就業と収入
4 職場におけるテレワーク等の対策
5 情報通信技術の利用
6 収入減の人への支援策に対する意識
7 コロナ禍での不安
8 まとめ
第11章 「コロナなんでも相談会」電話相談記録票による分析
1 はじめに
2 電話相談記録票データ
3 検証項目と相談者の属性の関連
4 推定結果
5 まとめ
終 章 貧困リスクの考察
1 貧困のリスク要因の考察
2 犯罪と貧困の考察
3 新型コロナと格差
4 終わりに
あとがき
参考文献
英文要旨