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写真:安部磯雄の生涯
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安部磯雄の生涯
質素之生活高遠之理想

井口 隆史

A5判 568ページ

本体 3,000円+税

ISBN:978-4-657-11006-0

amazon.co.jp

作品概要

 「日本の野球の父」と敬愛されるその人は自由なキリスト教信仰と愛する妻に支えられ、平和・民主・社会主義の先駆けとして激動の明治・大正・昭和を清冽に生き抜いた理想主義者であった。

 イチロー、松井秀喜が大リーグで大活躍し、日本の野球ファンは、なにかとてつもない大きな夢を達成したような気分に浸った。こうした「夢」を、最初に見たのは誰だったろう。明治時代に、それも日露戦争のまっただなかに、早稲田大学の学生プレイヤーたちを引きつれてアメリカに渡り、本場の野球に挑んだ〝元祖・侍ジャパン〟、安部磯雄ではないか。まだ、“お国”ですら外交デビューを果たしたばかりの中、“WASEDA UNIV.”をいち早くアメリカ人に知らしめ、早稲田大学に国際交流の目を開かせたのは、この遠征にあり、実現に尽力した安部にあると言えるだろう。 
 学生野球の父・安部がいたからこそ、古くは長嶋茂雄、そして斎藤佑樹も神宮のスターとして名を馳せることができたのである。今でも早大野球部は、命日に現役部員が墓参を行う。
 しかしながら安部の功績は、野球文化の興隆だけではなく、今の民主党にも繋がる社会主義系の政党の黎明期にその流れを確固たるものにしたことにあり、初期の社会主義の弁士である片山哲・西尾末広など錚々たる政治家が安部のもとを頻繁に訪れていることが夫人の日記を通じて描かれている。安部の体調や日和までをも交えて淡々と書かれている日記に、逆に大正デモクラシーや第二次世界大戦に向かう激昂時代を誠実無比に生きた安部の姿を生々しく感じる読者は多いだろう。

第60回日本エッセイスト・クラブ賞。[外部リンク]
日本図書館協会選定図書。

著者プロフィール(編者、訳者等含む)

『産経新聞』(2011年8月21日・日曜日)の第12面(読書面)に紹介記事掲載
『FACTA』(2011年9月号)(ファクタ出版)の「FACTA BOOK Review」に書評掲載。評者:山本一生氏
『週刊朝日』2011年9月9日号)(朝日新聞出版)の「週刊図書館」に書評掲載。評者:宮田親平氏(医・科学ジャーナリスト)
『早稲田学報』1190(2011年12月号)(早稲田大学校友会)の「本と本棚」に書評掲載。評者:望月雅士氏(早稲田大学大学史資料センター嘱託・教育学部非常勤講師)

目次など

はじめに

第一章 福岡から京都へ
 1・夫の書簡と妻の日記
 2・黒田藩の没落士族
 3・同志社で新島襄と出会う
 4・安部姓を名乗る
 5・駒尾と婚約

第二章 社会主義に光を見出す
 1・最初の教師生活
 2・岡山教会の若き牧師
 3・婚約時代の文通
 4・洋行の念願かなう
 5・ハートフォード神学校
 6・イギリス旅行とドイツ留学
 7・結婚へ

第三章 日露戦争に反対する
 1・古寺で始めた新婚生活
 2・石井十次と信仰上の対立
 3・同志社事件
 4・上京、東京専門学校へ
 5・「社会主義研究会」と「六合雑誌」
 6・行動する新教授
 7・社会民主党の結党と宣言書
 8・日露非戦を訴える
 9・平民社の同志と袂を分かつ

第四章 日本の野球の父
 Ⅰ・早大野球部の墓参
 2・日露戦争中のアメリカ遠征
 3・神に召された長女
 4・「再婚すまじ」宣言
 5・幸徳秋水と安部
 6・大逆事件と冬の時代
 7・大正デモクラシー
 8・ユーティリティマンに徹す
 10・「他人迷惑無用」

第五章 大正デモクラシーと安部家
 1・静の婚約、渡米
 2・同志社総長就任を断る
 3・軽井沢の夏
 4・シカゴで父と娘が再会
 5・初孫、異国で誕生

第六章 社会民衆党を率いて政界へ
 1・六大学野球と摂政宮
 2・大震災のあとで
 3・日本フェビアン協会
 4・社会民衆党を結成する
 5・大正十五年の安部家
 6・婿の来日、隣人の媒酌
 7・初の普通選挙で当選

第七章 父として母としての「卒業」
 1・大病からの生還
 2・最初の議会演説
 3・夫婦でアメリカ旅行
 4・満州事変の前夜
 5・社会大衆党の結成へ
 6・民雄、道雄の結婚
 7・末娘・夏の結婚

第八章 江戸川アパートの党首夫妻
 1・富士登山と光の村
 2・千五百円の理想選挙
 3・東京市議を兼職、市長候補に
 4・江戸川アパートは千客万来
 5・暴漢に襲われる
 6・赤木夫婦の波高き航路

第九章 政治家を辞する
 1・斎藤問題と議員辞職
 2・駒尾と孫娘の交流
 3・三十七組目の媒酌
 4・戦時下に訃報相次ぐ
 5・西多摩で終戦を迎える

第十章 穏やかな終幕
 1・戦後の草庵で語る
 2・最後の野球観戦
 3・静かなる臨終
 4・雑司ケ谷霊園の石碑
 5・九十一歳の誓い

あとがきにかえて

安部磯雄の年譜
参考文献
人名索引

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