他人を頼ることは「悪」なのか。
「自立」が叫ばれるこんにち、高齢者や障がい者など他人に「依存」せざるを得ない人びとがいる。肩身の狭い思いをしながら、社会の片隅にひっそりと生きる人びと。かれらが、胸を張って生きることができる社会へ。
教育学の泰斗が放つ、現代日本への強烈なアンチテーゼ。
早稲田大学名誉教授。文学博士。
1933年生まれ。故郷は長野県上伊那郡。2011年、瑞宝中綬章受章。
第一話 イタチを忘れない
第二話 「臭い」から「匂い」へ――藤川幸之助の人間論
一 認知症と人間学
二 「ポ」と「ユ」の間
三 「臭い」の構図
四 支える側が支えられて生かされていく――依存への道
第三話 生きる
一 平和に生きる
二 自由と平等に生きる
三 生命の質に生きる
四 他者と生きる
五 依存として生きる
第四話 人はなぜ泣いて誕生するのか
第五話 ケニヤッタから学ぶ他者論
第六話 重いものと軽いもの――一人前の人間誌
一 一人前の基準
二 他者との関係
第七話 人の間――寄り添う
一 一茶の添寝
二 源信の看取り
三 〈遠田のかはづ天に聞ゆる〉
四 賀川豊彦「涙の二等分」
五 「おまへはいゝかい」「はい、よろしうございます」
六 『かけがえのない父母へ』
第八話 ネコはネコを通してはじめてネコとなる
第九話 只野真葛とデカルト
第一〇話 結憲章、舫(もやい)宣言――依存の原像
一 結の創景――知識結と五人組
二 語源と呼称
三 意味と種類(内容)
四 共同防貧と「もやい直し」――結・舫の新たなまなざし
第一一話 『病家須知』――初の他者援助法
第一二話 依存は極楽である――『浮世風呂』から
第一三話 耄耋(ぼうてつ)余聞
一 猿の道、猫の道
二 インノセントに生きる――天音さん
三 患者の「患」考
四 To Cure Sometimes
第一四話 無縁死と依存
第一五話 裁断橋物語――心象としての依存
第一六話 ふりかえりましょう――永観堂みかえり阿弥陀さま
第一七話 太田典礼――優生思想への道と現代
一 太田典礼の業績と反人間観
二 優生思想の深化
第一八話 教養とは――「他者共信」の思想
一 修養への道程
二 教養への道程
三 「他者共信」への道程
第一九話 人間を討(たず)ねる
一 「人間」の定義から
二 ホモ論について
三 間人と間柄
四 相互依存
五 人間宣言――人間を討(と)う意味
余論 〈高遠の桜〉序より
あとがき