日本バレエの母　エリアナ・パヴロバ

優美さの原点。すべては一人の女性からはじまった。

フランス、ロシア、英国などのバレエ先進国では、国立の養成所があるなどバレエは国家プロジェクトである。一方日本は、民間スクールの奮闘により数多くのスターダンサーを輩出、いまや世界屈指のバレエ大国となった。それはまさに日本の稽古事文化の枠組みにヨーロッパの身体芸術が見事に融合した結果といえる。しかし、この歴史的な快挙が一人の帰化女性により成し遂げられたという事実はあまり知られていない。

ロシア革命により故国を追われ、関東大震災で被災。復興期に日本バレエを立ち上げ、太平洋戦争時の慰問先で客死したエリアナ・パヴロバ（霧島エリ子）。彼女のバレエに捧げた人生は壮絶そのものであった。

著者は、亡命ロシア人エリアナの日本における足跡からロシアでの出自にいたるまでを博捜。精緻な考察，豊富な写真と資料で舞踊史の新たな世界を照らし出す。バレエファンのみならず、すべての日本人に贈る。

日本図書館協会選定図書。

「今，日本はバレエ・ブームという。皆さんもこの著作を通じて，エリアナ先生が日本のバレエの『移植者』であることを今一度思い返して欲しい」日本バレエ協会名誉会長　島田 廣

「本著は，日本バレエというオリジナリティをもった一つの芸能が誕生する経緯を，まるで膨大な資料から視覚化するような，価値ある一冊ではないだろうか。（中略）日本のバレエが辿ってきた道とこれからの道，この両面が史実においての検証という形で書かれた本書の価値と功績は大きいと思う。」（評者 冨澤ひろ江氏）2013年4月27日 図書新聞より

「本書は精緻な考察の書であると同時に，一人の亡命女性の息吹までも感じさせる読み物としても優れている。（中略）写真図版が豊富であることも，読者には嬉しい。日本の時代背景が透けて見える各マスコミ報道の記事・写真，ポスター，プログラムは興味が尽きない。特に，アンナ・パヴロワと同名作品におけるポーズ写真をいくつか対比して検証するページなど，バレエ・ファンの関心を熟知した研究者の手になる書であることがよくわかる。」SWAN MAGAZINE [スワン・マガジン]（2012年夏号　Vol. 28）より

「今後，日本バレエ史に関する研究は，本書を基礎とすることになるといわざるを得ない。（中略）多くの読者が本書を紐解かれることをお勧めする。」早稲田学報（2012年8月号　No. 1194）より

「著者の川島京子氏が１０年以上をかけて，エリアナの足取りと前後の日本の洋舞環境を調べた労作だ。」2012年5月6日 日本経済新聞朝刊より

「パヴロバを巡る貴重な写真や年表，弟子らの証言，関連の新聞記事，公演のポスターなど豊富な資料が往時を生き生きと伝え，学術論文ながらノンフィクション作品のような臨場感が味わえる。」2012年5月1日 鎌倉朝日「著書」欄より [外部リンク]

「その壮絶な人生を悼みロシアでの出生から日本での足跡を丹念に迫ったのがこの1冊。」2012年5月1日 Classic Note（旧関西音楽新聞）「新刊情報」より

「時代に翻弄された『日本バレエの母』の数奇な人生を，本書はさまざまな資料や証言を基に再現。知られざる生い立ちにも迫った。バレエ史だけでなく，日本近代史をひもとく上でも貴重な書といえるだろう。」2012年4月15日 徳島新聞「読書」，南日本新聞「読書」，4月22日信濃毎日新聞「読書」，大分合同新聞「新刊」各欄より

「日本に最初にクラシック・バレエを伝えた女性が，白系ロシアの美貌の貴族，だったということは，日本のバレエの受容に様々な影響を与えたと思われる。本書は，そうした観点から『日本のバレエの母』の物語を読む楽しみも備えているのである。」2012年4月10日 Dance Cube （チャコットWebマガジン）より [外部リンク]

第1章 日本バレエ前史
第2章 エリアナ・パヴロバ日本での足取り
第3章 日本初のバレエ学校「パヴロバ・バレエスクール」
第4章 エリアナ・パヴロバ来日前の芸歴について
第5章 エリアナの弟子たちに遺された課題
資料編 エリアナ・パヴロバと日本バレエ