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災害大国のわが国において、マンションの住民やビルのテナント事業者が安心してすごすためには、地震などの災害に対して自分が入居するマンションやビルがどれだけの耐久力をもち、また、被災したときにどれだけ迅速に復旧できるのかという、建物のレジリエンス性能に関する情報が公開されていることが望ましい。
しかしわが国では、そうした情報はマンションやビルのオーナーに偏在しているのが現状であり、情報の公開を義務付ける法律も存在しない。その結果、人々は建物の耐震性や災害が起きたときの復旧に関する情報を知らないまま、入居を続けている。
こうした由々しき状況を変えるべく、不動産評価の新たな仕組みづくり、地震保険の活用、建築保全の評価・格付けの新手法の開発など、人々が安心して日々の生活をおくるための具体的手法を提案する。
高口洋人(早稲田大学創造理工学部建築学科教授)
山田一輝(損害保険ジャパン日本興亜株式会社企業商品業務部特命課長)
前田拓生(高崎商科大学商学部教授、早稲田大学理工学研究所招聘研究員)
筒井隆博(三井物産株式会社)
井上高秋(国土交通省官庁営繕部技官)
寺本英治((一財)建築保全センター理事)
1章 建築物のレジリエンス
1-1 災害多発時代を生き抜くために
1-2 建築基準法は最低基準
1-3 首都直下地震の被害想定
1-4 東北・熊本での建築物の被害状況
1-5 日本の安全性のランキング
1-6 建築物のレジリエンス
コラム リスク管理が苦手な言霊の国 日本
2章 地震保険によるリスク低減
2-1 保険というリスクヘッジの仕組み
2-2 日本の住宅向け地震保険
2-3 日本の企業向け地震保険
2-4 地震リスク評価モデル
2-5 地震保険の提供へ向けた課題
コラム 地震発生直後の危険度判定
3章 保険の仕組みから見た建築物の評価
3-1 保険契約を理解するために
3-2 リスク選好と効用(満足感)
3-3 地震保険の経済モデル
3-4 レジリエンス評価による地震保険の改善
3-5 まとめ
コラム ミュンヘン再保険 訪問記
4章 建築物のレジリエンスを評価する
4-1 建築物のレジリエンスを評価する
4-2 建築構造のレジリエンス評価
4-3 建築設備のレジリエンス評価
4-4 ライフラインのレジリエンス評価手法
4-5 レジリエンス性能を分かりやすく表現する
5章 建築保全の評価・格付け
5-1 さまざまな評価の手法と項目
5-2 建築保全の評価・格付けの開発
6章 レジリエンス評価の社会化
6-1 不動産市場における「市場の失敗」
6-2 レジリエンス評価を社会に組み込む
6-3 エビデンスにもとづくリスク情報の収集
6-4 レジリエンス性能が自律的に改善される社会を目指して
コラム 自動運転によるリスク低減と自動車保険