ホーム > 政治経済・法律・ビジネス, 新刊案内, 東京安全研究所・都市の安全と環境シリーズ > 木造防災都市
「火事に強い木造」で都市大火を食い止める――。
2010年代後半、東京都内の住宅火災による死者数が増加に転じ、全国では大規模火災が再び顕在化している。これまでの建築の防災対策では、不燃化が推進される一方、「火事に強い木造」が模索されてきた。その経過を振り返り、市街地の防災のあり方を探る。
火災を中心に防災工学を専門とする筆者が、「木造防災都市」という切り口で、近代の都市防災対策の枠組や政策を再考し、木造の都市防災的活用の可能性や都市の安全化に必要な今後の社会的取り組みを展望する。
長谷見雄二(はせみゆうじ)
1951年東京生まれ。早稲田大学教授、東京理科大学客員教授。
1975年早稲田大学大学院修士課程修了。工学博士。建設省建築研究所研究員・防火研究
室長を経て、1997年より現職。専門は、火災を中心とする建築・都市の防災。
主な著書に、『ホモファーベルの建築史─アメリカ建築物語』(都市文化社)、『火事場のサイエンス─木造は本当に火事に弱いか』(井上書院)、『災害は忘れた所にやってくる─安全論ノート』(理工図書)、『20世紀の災害と建築防災の技術』(技報堂出版・共著)、SFPE Handbook of Fire Protection Engineering(Springer、 共著)など。
国際火災安全科学学会P.H.Thomas Medal of Excellence、H.W.Emmons賞、D.D.Drysdale賞、アジアオセアニア火災科学技術学会永年功績賞、日本建築学会賞(論文)、日本火災学会賞、空気調和衛生工学会賞(論文賞・技術賞)、国際火災研究機関長フォーラムSjollin賞、建設大臣業績表彰、東京都消防行政特別功労章、Waseda Research Award, 木の建築フォラム第1回木の建築大賞(共同受賞) 、石膏ボード工業会特別功労賞、日本ツーバイフォー建築協会坪井賞など受賞。
1章 木造都市だったロンドン、ニューヨーク
──どのようにして防災都市化したのか
1-1 日本は木の国だから大火を克服できなかったのか
1-2 大火前後のロンドン、ニューヨーク、シカゴの状況
2章 近代化の中の木造防災都市
──文明開化からの100年/理想と現実
2-1 明治の木造防災都市
──東京防火令とその後
2-2 関東大震災
2-3 戦前期木造防火研究
──木造防災都市への工学的アプローチ
2-4 戦後、頻発した大火はどうして克服できたのか
3章 木造建築はどうすれば火事に強くできるのか
3-1 構造全体が木造でも火事に強くできる
──戦後初の木造住宅火災実験
3-2 密集市街地を木造で防災化することはできないか
3-3 木造を火事に強くする原理
3-4 準耐火構造という考え方
3-5 伝統木造も火事に強くすることができる
3-6 現代の都市を木造でつくっていくには
──性能規定化の先の木造建築技術
4章 災害に強くない建物で防災都市をつくるために
4-1 ゲリラ化する自然災害
──近世集落に見る木造防災都市の可能性
4-2 コロニー化する施設と災害危険
4-3 成長しない時代の防災戦略を考える
4-4 災害に強くない建物でつくる防災都市の実践
──伝統的建造物群地区での試み
4-5 祭と防災
──天災の時代・18世紀に学ぶ防災まちづくり