民族対立や宗教対立が世界各地で勃発する一方、森林伐採やオゾン層の破壊により環境汚染が進行する。そうした現代の危機を乗り越えるために、新しいものの見方・考え方を提唱する。
近代文明は人類に3つの人間解放をもたらした。第一に科学的合理的思考により迷信や因習など精神的抑圧からの解放、第二に工業化による貧困からの解放、第三に民主化による政治的社会的抑圧からの解放である。
しかし他方で自然の破壊、地域共同体の破壊、精神と文化の破壊の3つの破壊をもたらし、この文明を続けたならば、数世紀経ずに人類は滅亡することが明白となった。 したがって近代文明を根本的に反省し、これを転換させなければならない。
本書は今日の時代状況をこのように捉えて、近代文明の価値観、自然観、人間観、社会観、技術観を再検討し、さらに科学の可能性と限界および「あるべき方向性」を明らかにする。そのために哲学・思想を踏まえて、社会科学における主観性、客観性、実践性と倫理を考察する。これらを総合して「新しい文明のパラダイム」を叙述している。(田村正勝)
Ⅰ 危機に立つ近代文明
1 近代化の成果と限界
2 近代文明のパラダイム
3 経済主義の悪循環
Ⅱ 社会科学の本質と課題
1 社会科学と近代的世界観
2 社会科学の主観性・客観性・実践性
3 社会科学の反省
Ⅲ 近代の超克
1 エロスとロゴス
2 新しい文明のパラダイム
3 必然・自由・偶然