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株式会社が資金調達のために行う新株発行。この方法には既に保有されている株式の価値を低減させるなど、既存株主の権利を損なう可能性がある。資本の増加を目論む企業と、株式の価値を維持したい株主の間に存在するジレンマはどのように解決できるのか。株主の利益保護を優先しながら解決をはかったフランス会社法について、特別総会と取締役会の関係や、優先引受権のありように着目し、成立の経緯のみならず実際の運用に即した柔軟化の過程まで、商法典の条文を克明に辿る。
亜細亜大学法学部法律学科准教授、博士(法学)。
早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了。早稲田大学法学学術院助手、亜細亜大学法学部法律学科助教、同専任講師を経て現職。フランス法およびEU法を比較法の対象に、会社法および資本市場法を中心に研究している。
はしがき
序 論
1 本書の対象と目的
2 フランス法の採用する2つの原則およびそれらと既存株主の利益との関係
3 日本法における授権資本制度との比較
4 フランス株式会社法を研究する意義
5 本書の構成
第一部 原則の成立
第一章 新株発行の決定権限の特別総会への専属
第一節 1807年商法典のもとにおける展開
第一款 1807年商法典における株式会社の扱い
第二款 実務における展開
第三款 学説の態度
第二節 1867年7月24日の法律のもとにおける展開
第一款 1867年7月24日の法律31条の意義
――商法典のもとでの成果は引き継がれたか
第二款 特別総会の権限を明らかにしようとする各所の動向
――1892年5月30日の破毀院判決以前
第三款 1892年5月30日の破毀院判決による飛躍
第四款 立法者による法改正の取組み
本章の結び
第二章 株主の新株に対する優先引受権の法定およびその理論的基礎
第一節 フランスにおける優先引受権の法定
第一款 1935年8月8日のデクレ・ロワ以前の状況
第二款 優先引受権の法定の経緯
小 括
第二節 フランスにおける優先引受権の理論
第一款 株主の会社資産に対する権利の保護に根拠を求める見解
第二款 株主の議決権比率の保護に根拠を求める見解
第三款 優先引受権の公正性
本章の結び
第一部の結び
第二部 原則の展開
第一章 取締役会に対する新株発行の権限委譲
第一節 新株発行を実施する権限の委譲
第一款 1943年3月4日の法律以前
第二款 1943年3月4日の法律による権限委譲に関する法規制の導入
第三款 1966年7月24日の法律による1943年3月4日の法律の承継
第四款 1994年8月8日の法律による権限委譲の柔軟化の試み
小 括
第二節 新株発行を決定する権限の委譲
――2004年6月24日のオルドナンスによる改正後の権限委譲の新たな規制
第一款 新株発行の「決定権限の委譲」とは何か
第二款 新株発行を「実施する」権限の委譲との異同
第三款 1994年8月8日の法律における包括的権限委譲との比較
第四款 上場会社における権限の復委譲の許容範囲の拡大
第五款 権限委譲を受ける取締役会の株主総会に対する説明義務
本章の結び
第二章 株主の優先引受権を中心とした新株発行規制の展開およびその分析
第一節 株主の優先引受権を維持して行う発行
第一款 現行のフランス商法典における株主の優先引受権の原則
第二款 優先引受権制度が規律する新株発行のスケジュール
第三款 「優先期間」による優先引受権の代替
第四款 検討
第五款 制裁
小 括――法律が優先引受権を確立し株主利益を擁護したことの現代における意義
第二節 株主の優先引受権を除去して行う発行
第一款 導入
第二款 新株の割当先を示して行う除去
第三款 公募または私募のため新株の割当先を指示しない除去
第四款 制裁
本章および第二部の結び
結 語
あとがき
参考文献
索 引
英文要旨