1882(明治15)年10月、早稲田で東京専門学校が開校した。文明開化が起こり外国の文書が多く流入していた時代に、邦語(日本語)教育を提唱したのが、東京専門学校設立に参加した小野梓だ。これは「学問の独立」を目的としたもので、のちに東京専門学校が早稲田大学になった際に教旨に掲げられた。小野梓は大隈重信のブレーンとして、大隈を党首とする立憲改進党を立ち上げ、自由民権運動へ身を投じた。歴史のうねりの中、日本社会の変革をめざし33年10カ月の生涯を走り抜けた。小野梓の思想はどのように育まれ、実践へうつされていったのか。早稲田の建学に照準を定めながら、最新の研究成果を新資料とともに探る。
早稲田大学名誉教授。1950年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程満期退学。博士 (文学)。日本近代史を専門とし、警察史、自由民権運動史、対外認識史などを追究。主な著書は『警察の社会史』(岩波書店)、『近代日本の警察と地域社会』(筑摩書房)、『自由民権期の社会』(敬文舎)、『「主権国家」成立の内と外』(吉川弘文館)、『世界の中の近代日本と東アジア』(同)、『小野梓―未完のプロジェクト』(冨山房インターナショナル)など。
まえがき
第一章 青春の志
――日本から世界へ
1 開国・維新の時代に生まれる
2 日本のなかで、アジアのなかで
3 私費でアメリカ留学
4 官費でイギリス留学
第二章 帰国後の実践
――新しい日本のために
1 共存同衆の創立
2 共存同衆の発展
3 共存同衆の変化
第三章 少壮官僚として
――‟上”からの近代化めざして
1 中央政府の官吏となる
2 会計検査院の検査官となる
3 大隈重信のブレーンとして
4 「明治十四年の政変」
第四章 立憲改進党の結成
――「改進」の実現めざして
1 立憲改進党の結成
2 立憲改進党の掌事として
3 解党問題と立憲改進党の再編
第五章 東京専門学校の開校と書店の経営
1 東京専門学校の開校
2 東京専門学校の小野梓
3 東洋館書店の開業
第六章 小野梓の「志」とメッセージ
1 社会はいかにあるべきか
2 国家はいかにあるべきか
3 国際関係はいかにあるべきか
第七章 生き続ける〈小野梓〉
1 「花」を見ぬまま世を去る
2 遺志を受け継ぐ
3 〈小野梓〉は生きている
4 新しい時代と〈小野梓〉
あとがき