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カントリー・バイアスとは、外国に対する先入態度をいう。例えば、日本との外交問題をきっかけに中国や韓国で時折表面化する反日感情は、「消費者アニモシティ(敵対心)」というネガティブなカントリー・バイアスでとらえられる。反対に、海外の多くの人たちが日本に対してもつ「日本製品は安くて品質がいい」「日本の漫画やアニメ、ゲームは面白い」というイメージは、「消費者アフィニティ(好意、愛着、感嘆)」というポジティブなカントリー・バイアスでとらえられる。
従来、学界やメディアではネガティブなカントリー・バイアスが取り上げられることが多かった。しかし、本書はポジティブなカントリー・バイアスに注目する。ポジティブなそれを理解することこそが、外国人の日本製品・サービスに対する評価に好ましく作用し、長きにわたり日本のファンになってもらう契機になるからである。
日本がいかに世界の人々の〈こころ〉をつかみ、それによって自国の製品・サービスの海外進出を促進するのか。ひいては、日本という国家のイメージを底上げしていくのか。『多文化社会の消費者認知構造』で数々の学会賞を受賞した気鋭の研究者が、ビジネスパーソンにもわかりやすく書き下ろした一冊。
これを読まずしてこれからのマーケティングは語れない!
【推薦のことば】
多文化社会と呼ばれる今日、カントリー・バイアスという先入観で溢れている。本書には、そうした先入観を理解し、多文化社会を生き抜くための洞察が詰まっている。――恩藏直人(早稲田大学商学学術院教授)
立命館大学経営学部准教授。早稲田大学商学部卒業後、渡英しロンドン大学でMA(Environment, Politics, & Globalisation)とMBA(International Management)を取得。早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。九州大学大学院経済学研究院助教などを経て現職。専門は経営学/マーケティング。
主著に『多文化社会の消費者認知構造――グローバル化とカントリー・バイアス』(早稲田大学出版部、2021年。日本マーケティング学会「日本マーケティング本 大賞2021」準大賞、日本商業学会奨励賞、異文化経営学会賞(著書部門)を受賞)。訳書に『インタビュー調査法の基礎――ロングインタビューの理論と実践』(千倉書房、2022年)。
プロローグ カントリー・バイアスを通した消費者心理の理解
1 本書が生まれた背景
2 本書のコンセプト
【コラム】訪日観光を通して海外でのプレゼンスを高める
第1章 ポジティブなカントリー・バイアス
1 カントリー・バイアス研究の新潮流
2 ポジティブなカントリー・バイアスに関する概念
3 消費者アフィニティ(好意や愛着、感嘆)
4 消費者コスモポリタニズム(異文化への寛容さや賛美)
【コラム】インドネシア大使館でのバザールにみる消費者アフィニティ
第2章 ネガティブなカントリー・バイアス
1 源流としての消費者エスノセントリズム
2 消費者エスノセントリズム(自国中心主義)
3 消費者アニモシティ(敵対心)
【コラム】台湾はこれからも有望な市場となり得るか
第3章 プレイス・リレーテッド・コンストラクト――場所に関連した概念
1 「場所に関連した概念」という視点
2 カントリー・オブ・オリジン(製品・サービスの原産国)とは何か
3 カントリー・バイアスとの関係性
4 カントリー・オブ・オリジン研究からの示唆
【コラム】ICHIGO社にみる日本のお菓子のポテンシャル
第4章 グローバルとローカルの相互作用
1 消費者コスモポリタニズム概念との出合い
2 被面接者への迫り方
3 コスモポリタン消費者(CCGI)の形成プロセス
4 「旅」としてのコスモポリタニズム
【コラム】コスモポリタニズム、ローカリズムと人口動態的変数
第5章 コスモポリタン的表象――コスモポリタンからみえる世界
1 文化的アイデンティティの追求
2 舶来品嗜好
3 オーセンティックな経験
4 行動性向間にはどのような関係性があるのか
【コラム】日本にインスパイアされたブランド、アクセル・アリガト
第6章 どのようなコミュニケーションが有効になるのか
1 カントリー・バイアス研究の課題と機会
2 解釈レベル理論との出合い
3 コーズ・リレーテッド・マーケティングと消費者コスモポリタニズム
4 国内を支援対象とした場合(実験1)
5 支援対象が国外かつ支援内容を操作した場合(実験2)
6 支援対象が国外かつ画像を操作した場合(実験3)
7 解釈レベル理論がカントリー・バイアス研究に与えてくれたもの
【コラム】寿司職人が海外で月収200万円
第7章 相反するカントリー・バイアスが意思決定に及ぼす影響
1 現代の消費者行動のより良い理解へ向けて
2 カントリー・バイアスと近接概念間の関係性
3 カントリー・バイアスの多層性に迫る――中国・上海での調査
4 上海での調査を終えて
【コラム】働くことと学ぶことは同じ
エピローグ 本書を通して伝えたいこと
【コラム】同時通訳ソフトが普及する中、英語力は必要か
参考文献
索引