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石濱 裕美子 著
A5判 口絵4ページ 本文334ページ / 本体 7,000円+税
満洲人は,朝鮮人,中国人,モンゴル人が混在する遼東平野を故郷とし,これら歴史ある 3 集団にもまれながら清朝を形成した。そのため,異文化に対して敬意を表することに屈託なく,その摂取についても柔軟であった。
清皇帝は,向き合う集団の文化体系に合わせてその時々に自らの姿を示した。儒教官僚を前にしては儒教思想の説く理想的な王,天子の姿をとり,チベットやモンゴルの仏教徒の前では大乗仏教が理想とする王,菩薩王の姿をとり,満洲人たちの前では八旗の長たるハーンとして君臨した。マルチリンガルな国際人が向き合う集団の言語に合わせて自分の使用する言語を切り替えるように,清皇帝は対する集団の性質に合わせて言語体系や文化的な振る舞いを切り替え,異文化と円滑に交流を行った。
つまり,清皇帝を始めとする満洲人支配層は,満洲語,モンゴル語,漢語,チベット語を程度の差こそあれ理解し,中国文化人であると同時に,チベット仏教徒であり,狩猟に秀でた満洲武人であるという多面的な性格を有していたのである 。これは異文化を外なるもの野蛮なるものとして目下に設定する中国の王権とは対照的な性格である。
本書は,清皇帝が持つ複数の性格のうち,チベット仏教徒に向けて清皇帝が示した姿を様々な側面から解明していくものである。
―本文「はじめに」より
伊藤 りさ 著
A5判 404ページ / 本体 7,400円+税
近松門左衛門以降、17世紀後半から18世紀末までの約115年間に作られた源平物人形浄瑠璃において、平家物語の説話はどう取り入れられていったのか。豊富な資料と知識をもとに、これまでの先行研究にみられるような単なる典拠論をはるかに超えた浄瑠璃作劇法論を展開。
18世紀浄瑠璃研究に確実な進展をもたらす一冊であり、浄瑠璃・歌舞伎研究者にとって必携の書であることはもちろん、平家物語研究者にとっても一読の価値がある貴重な研究書である。
第44回 日本演劇学会河竹賞奨励賞受賞。
市川 熹 著
A5判 236ページ / 本体 5,600円+税
ことばは表出すると同時に消えていく(揮発性)にもかかわらず、なぜ対話は円滑に進むのか。声のイントネーションといったプロソディ情報が、実時間でのコミュニケーションを可能にしている実態を豊富なデータをもとに明らかにした意欲作。
河西 宏祐 著
A5判 302ページ / 本体 6,100円+税
「広電現象」
2009年、「広電現象」とよばれる社会現象が巻き起こった。広島に本社を置く広島電鉄の労働組合が、この年の春闘において、「全契約社員の正社員化」という成果を獲得したというニュースが全国を駆け巡ったのである。その労働組合の名前は、私鉄中国労働組合広島電鉄支部という。
「第Ⅰ部 混迷」では、約40年間にわたって分裂状態にあった同社の2つの労働組合が統一を果たし、新たな広電支部が誕生した1993年から、経営側にたいする反攻に転じた2002年までの約10年間を扱っている。この約10年間、広電支部は経営側からの激烈としか言い様の無いほどの激しい経営合理化攻勢にさらされ続け、組合内は混迷の極みにあった。
「第Ⅱ部 再生」では、苦境のなかから支部が反転のきっかけをつかみ、2009年の「全契約社員の正社員化」を実現するまでの再生過程を扱っている。
【教科書・参考書指定】 広島大学
#本商品は在庫僅少となっております。[新装版(ソフトカバー)](2012年7月25日発売)のページをご覧ください。
Ayako Yoshino 著
A5判 296ページ / 本体 6,500円+税
The first-book length study of English historical pageantry looks at the vogue for pageants that began when dramatist Louis Napoleon Parker organised the Sherborne Pageant in 1905.
上野 和昭 著
A5判 576ページ / 本体 9,800円+税
江戸期における京都のアクセント体系および室町期以降のアクセントの変遷について、平曲譜本をはじめとする豊富な資料をもとに明らかにした大作。
第30回新村出賞受賞。
飯山 知保 著
A5判 464ページ / 本体 8,900円+税
6世紀末に端を発し11世紀に制度的に確立した科挙制度は、万人に開かれた栄達の道として、広範な地方知識人層=「士人層」を生み出し、中国社会を規定しつづけてきた。その科挙の歴史の中で絶えず問題とされた南北格差はいかに生まれ、どのような文化的・社会的・経済的意味を持ってきたのか。中国史研究のこの大きなテーマに対し、多くの民族=征服者との接点をなした華北社会の独自の姿に注目し、特に12~14世紀の金代やモンゴル支配の時代に焦点を当てて、南方の漢人社会とは異なる実像を描こうとする雄大な研究。広範な碑刻史料を渉猟し、新しい大量の文献史料を収集・精査して、宋代以降の中華地域における金元時代の意義を問う力作。
青木 雅浩 著
A5判 440ページ / 本体 8,200円+税
モンゴルにとって1921~1924年は、その後現代に至るまでのモンゴルの基盤がつくりあげられた重要な時期である。この重要な時期に外モンゴルで発生した数々の政治事件について、気鋭のモンゴル近現代史研究者が、モンゴルおよびロシア現地で収集した豊富な史料をもとにその真相を明らかにするとともに、モンゴル近現代史において重要な意義を持つ外モンゴルとソヴィエト、コミンテルンの関係の本質について考察を加えた意欲作。
平成23年度・第6回樫山純三賞受賞。
内田 悦生・下田 一太(コラム執筆) 著
A5判 口絵(カラー)12ページ 本文268ページ / 本体 6,100円+税
アンコール遺跡では、石材が遺跡建造に関する多くの重要な謎を語る。文化財科学による最新の調査・研究成果をわかりやすく解説するほか、建築学の視点からみた遺跡にまつわるコラムを掲載。専門家のみならず、一般の読者が世界遺産を堪能するための必携書。
【『早稲田学報』1191(2012年2月号)(早稲田大学校友会)の「本と本棚」に書評掲載。評者:松井敏也氏(筑波大学大学院世界遺産専攻准教授)】
五十嵐 誠一 著
A5判 510ページ / 本体 8,600円+税
アジア諸国のなかで、いちはやく民主主義体制への移行を果たしたフィリピン。その移行過程においては、市民社会が重要な役割を果たした。民主主義体制への移行過程において、市民社会はどのような役割を果たし、その実態はどのようなものであったか、また市民社会はいかなる手段で民主主義の定着・発展過程に貢献してきたのか。他のアジア諸国との比較も意識しつつ、市民社会の視座から民主化および民主主義の問題を改めて問い直した若き研究者の意欲作。
第10回日本NPO学会優秀賞受賞。