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新刊案内

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写真:海外研修×ディープ・アクティブラーニング

保﨑 則雄/藤城 晴佳 編著

A5判 229ページ / 本体:2,000円+税(2021年4月19日発売)

「知的な身体活動の具現化」として18年間にわたり実践されてきた早大・保﨑研の米国研修。研修のメインイベントは、「現地大学の学生たちを前に、日本文化に関するプレゼンテーションと、その後の質疑応答をすべて英語で行う」ことである。大半の学生たちにとって、すべてが未知の海外。かれらがときには協力しあい、ときには反発しあいながら試練を乗り越えていく姿を、教員・学生双方の報告から検証する。

(本書「はしがき」より)
「人の移動が極度に制限を受けている今こそ、海外研修について焦らず急がずに「準備」という形で、この時期にできること、すべきことを着実に確実に計画し、実行することが、とても重要です。身体の移動がかなわない時は、柔軟な思考や斬新なアイデアを創発させる時期なのです。
 では、どのような準備をすればいいのか。海外渡航が再開されたときのためにそのヒントを、本書からつかんでいただければと思います。」

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写真:環境政策のクロニクル

吉田 徳久 著

A5判ソフトカバー 388ページ / 本体:2,800円+税(2021年4月10日発売)

私たちは環境問題に真剣に取り組んできたのか――。
わが国の環境政策は、経済的・社会的な持続可能性の要求との間でしばしば対立・相克を繰り返してきた。水俣病問題からパリ協定までの60年余りの歩みを振り返りながら、環境問題の本質を読み解く。

【出版社からのコメント】
史実を精確に辿りながら、政治・行政と科学の両面から環境政策の体系をくまなく論じた本書は、過去の集約でなく、これからの環境政策への道標である。充実した索引項目は、環境事典としての利用を可能にしてくれる。淡々とした筆致の中から読者に訴えかける、環境のアイロニーとジレンマもまた異色である。
2019年10月の刊行以来ご好評いただいてきた初版本を、このたび使いやすいソフトカバーに替え、お手頃価格の新装版としてお届けします。

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写真:東京 パンデミック

山岸 剛 著

新書判 198ページ / 本体:900円+税(2021年4月7日発売)

感染爆発によるコロナ危機で、世界の際(きわ)に立たされた私たち。
究極の選択はどちらか。「死を忘れるな」か。「今この瞬間、刹那を楽しめ」か。
「都市」と「人間」の病理をあぶり出す渾身のフォトエッセー。

新型コロナウイルスの感染拡大で、初の緊急事態宣言が東京に発令された2020年4月7日。それを境に「都市」と「歴史」、「人間」と「摂理」の関係がどう変わったかを36枚のモノクロ写真とエッセーで明らかにする本書。気鋭の写真家が挑んだ「都市」と「人間」の病理を証明する挑戦は、コロナ禍における「都市」と「人間」の再発見でもあった――。

【「試し読み」できます】
東京 パンデミック.pdf



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いずれも本書所収のモノクロ写真(©Takeshi Yamagishi)

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写真:スウェーデンの租税政策

馬場 義久 著

A5判 304ページ / 定価:4,000円+税(2021年3月12日発売)

【租税資料館賞受賞!】
 スウェーデンの高福祉は巨額の税収によって支えられている。巨額税収をあげるためには、課税の公平性を確保しつつ、民間活力を極力阻害しない租税政策が求められる。
 1991年の二元的所得税の導入以降のスウェーデンの租税政策を検証し、同国がいかにして社会保障費などの財源を調達しているかを解明する。それは超高齢社会の日本にとっても、大いに参考となるであろう。

【訂正情報】本書99頁の図4-8につきましては、誤りがございました。お詫びのうえ、下記の通り訂正させていただきます。
 図4-8(p.99)訂正.pdf

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写真:倭王権の考古学

加藤 一郎 著

A5判 312ページ / 本体:4,000円+税(2021年3月8日発売)

【第13回日本考古学協会賞奨励賞を受賞!】

日本列島における国家形成期とされる古墳時代、「倭王」の称号が授与された人物が存在し、「倭」の領域を支配する王権構造が機能していた。そこでは、古墳という墓制が活用され、王権構造が生成・維持・発展されてきた。本書では、倭鏡をはじめとする副葬品や埴輪など古墳の出土品を分析し、倭王権の構造や動態、そして古墳時代人の精神世界といった社会史や精神史的な側面について考察する。分析対象を、古墳時代をつうじて生産されていた複数の遺物とし、天皇陵古墳調査の最前線に立つ著者が、古墳時代像を解明する。

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写真:今、平和にとって「国民」とは何か

日本平和学会 編

A5判 184ページ / 定価2,200円+税(2021年3月8日発売)

グローバル化が進み、多種多様な国民国家がみられる今日。しかし、その理念と現実の乖離は甚だしい。「国民」の創出において、先住民や少数民族を抑圧してきた歴史や、尽きることのない移民・難民問題。「再国民化」では、排外主義的な言説や暴力を伴うことも少なくない。本号では、「国民」であることと平和の享受との関係の問い直しを迫る。

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写真:多文化社会の消費者認知構造

寺﨑 新一郎 著

A5判 292ページ / 定価:4,000円+税(2021年2月10日発売)

【2022年度異文化経営学会学会賞(著者部門)、2022年度日本商業学会賞奨励賞、「日本マーケティング本 大賞2021」準大賞、トリプル受賞!】

グローバル経済を人々の心で読み解く――。
貿易摩擦や規制強化にともなう保護主義的な潮流を背景に、1980年代後半から議論されているカントリー・バイアス(外国に対する先入態度)。国内で初めてカントリー・バイアスを体系的に論じた一書。グローバル化の進展によって外国がより一層身近なものとなる中、すべてのマーケティング研究者、商品等の海外展開に携わるビジネス関係者、必読。

【推薦のことば】
消費者の心理は、国家や文化の違いによって左右される。そうした違いを理解することなく、真のグローバル化に乗り出すことはできない。本書は、多文化社会の認知構造を解明する手がかりを私たちに与えてくれる。――恩藏直人(早稲田大学常任理事・商学学術院教授)

◆「試し読み」できます◆
多文化社会の消費者認知構造.pdf
 
【寺﨑新一郎氏「日本マーケティング本 大賞2021」準大賞受賞インタビュー】

 ――本日は宜しくお願いします。まず、今回の受賞作『多文化社会の消費者認知構造』を書かれたきっかけをお聞かせください。
 寺﨑 やはり一番のきっかけになったのは、イギリス留学での体験です。
 私は、ロンドン大学の修士課程で2年間ほど過ごし、1年目は経営学、2年目は環境・政治とグローバリゼーション学を勉強しました。この2年目のときに、中国やインドといったアジアからの留学生、そして現地のイギリス人など、多様な国々の人々と交流するようになり、その中で、外国や異文化に対する関心がわいてきました。
 例えば、ロンドンのピカデリー・サーカス付近にあるチャイナ・タウンによく足を運んでいたのですが、そこで同じ中華料理でもシンガポール風とか、中国のなかでも北方や南方、上海風といった色々な味付けがあることを知りました。
 中国や韓国など、日本と政治レベルで対立する国々からの留学生も周囲に多くいましたが、寮で一緒に過ごしていましたし、料理を作ったり、旅行に行ったり、友達として普通に楽しく付き合っていました。
 一方でどの留学生も自国民としてのアイデンティティはしっかり持っていました。中国人は中国人、インド人はインド人というアイデンティティがありながら、実際の消費行動はすごくプロアクティブな感じで、興味深いのです。「国としてはあまり好きではないけれど、この国の商品は興味があるので買ってみよう、試してみよう」という人が多かったのが印象的でした。そこで、こうした行動を理論的に捉えられると、より良い消費者理解につながるのではと考えるようになりました。こうした体験が、本を書く動機に強い影響を与えました。

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 ―― イギリス留学を終えて日本に帰国後、早稲田大学大学院商学研究科の博士後期課程に進学されましたね。その後、研究はどのように進められたのでしょうか。
 寺﨑 当時はまだはっきりとした研究テーマがなかったので、とりあえず色々な海外ジャーナルのスペシャル・イシューを読み漁りました。主要ジャーナルのスペシャル・イシューを10年分ぐらい表にまとめてみたんです。その中で、学術的なジャーナルではありませんが、『ハーバード・ビジネス・レビュー』で「ディアスポラ・マーケティング」という概念に目が留まったのです。ディアスポラとは平たく言えば移民のことで、ディアスポラ・マーケティングというのは、移民をターゲットにしたマーケティングのことです。私も移民ではありませんが留学をしていたわけですし、これから日本にも移民が増えてくるかもしれない。こうした人々を1つの消費者セグメントとして捉え、マーケティングを考える機会も増えてくるだろうと考えたのです。
 それから恩藏直人先生の下、博士後期課程での研究指導を経て、九州大学で助教を務めるようになりました。九州大学箱崎キャンパスの近くは、インド人やネパール人がすごく多くて、JR箱崎駅近くのスーパーマーケットでは多くのエスニックな商品が取り扱われていました。こうした移民の方々も、日本に住んで考え方や価値観が変わるといった、文化変容が恐らく起こっていて、そのうち順応していくのだろうと想像しました。このメカニズムを明らかにしてみてはどうかと着想し、分析的なレンズを探していたところ、「コスモポリタニズム」という概念に出合ったのです。

 ―― 「コスモポリタニズム」概念に出合ったことが、研究上の大きな転機になったわけですね。そこから、どのように研究を進められたのですか。
 寺﨑 日本に住んでいる外国人で、コスモポリタン的志向を持つ人にインタビュー調査をしてみたかったのですが、研究費不足のため、日本人でコスモポリタン志向を持つ人を調査し、どのような過程を経て文化変容が進行したのか研究してみることにしました。本書の第4章から第6章は、このインタビュー調査がもとになっています。

 ―― インタビューでは、どのような話が聞けましたか。
 寺﨑 コスモポリタン志向が高まる背景として、やはり家族からの影響が大きいことが分かりました。お父さんが外国で仕事をしていて、帰国したときに土産話を聞かされたり、お土産をもらったりして外国に興味を持つようになったとか、お母さんが英語教師で、教え子の外国人と交流があって自分も外国に関心を持つようになったとかですね。
 一方で、コスモポリタン志向を有する人でも、ナショナリズム的な感情が高まる事例が多くみられました。それがナショナル・アイデンティティの再考という概念の着想につながっています。
 このように研究を進めていく中で、体系的なテーマへと昇華させるには入念な研究レビューが必要となってきました。そこで、コスモポリタニズムを大枠で捉えると、どのような概念として位置づけられるのか、関連概念を一通り整理しました。その過程で、消費者の「アフィニティ(好意や愛着)」、「エスノセントリズム(自国中心主義)」「アニモシティ(敵対心)」など、本書で紹介している様々な概念に出合ったのです。

 ―― 寺﨑先生の研究の面白さは、学術的、理論的な面にとどまらず、マーケティングという実用面に生かせる可能性があることです。そのあたりの意識は、いつ頃から持たれるようになったのですか。
 寺﨑 コスモポリタニズムの形成過程の研究をしながら、「コスモポリタン的なアイデンティティを有する人に対して、どのようなマーケティング・コミュニケーションが有効か」という研究に取り組むと、実用面でも有益な示唆が得られると直感しました。そんな時に、2016年に外川拓先生、石井裕明先生、恩藏直人先生が発表された論文で、解釈レベル理論というセオリーを使った実証研究が頭に浮かんだのです。この論文のテーマは、「心理的距離の遠近と対象の捉え方の変化」を検証するものでした。コスモポリタニズムとは、まさに外国や異文化に対する心理的距離を発生させるものであり、こうして生じた距離の遠近に対応したコミュニケーション方略が提案できたら面白いと考えました。

 ――その後、寺﨑先生は理論を裏付けるべく、実験による実証研究を積み重ねていきます。実験を始めて、手ごたえを感じるようになったのはいつ頃からでしょうか。
 寺﨑 2017年2月、京都大学の山内裕先生とシンガポールの南洋理工大学でセミナーを行ったとき、消費者行動研究で著名なジュリアン・カイラ先生に、実験内容を見ていただく機会に恵まれました。そこでカイラ先生から「これはめちゃくちゃ面白いじゃないか」と言っていただいたのです。「こういうタイプのアプローチはあまり見たことがない」と。その時、この研究の方向性は間違っていないと自信が持てるようになりました。

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 ―― 具体的にどのあたりが、カイラ先生に評価されたのでしょうか。
 寺﨑 既存のカントリー・バイアス研究の中で心理的距離を扱った研究はなく、こうした課題に正面から取り組んだことが大きかったと思います。ちなみに、心理的距離を扱ったカントリー・バイアス研究は、今でもまだありません。そのこともあってか、このテーマで2021年に発表した私の英語論文はよくダウンロードされているようです。
 そこで、書籍中にも度々登場するコペンハーゲン・ビジネススクールのアレキサンダー・ジョシアッセン教授に私の研究論文を送ったところ、カントリー・バイアス研究で実験的な手法を使ってコミュニケーション方略を検討したものはあまりなく、とても面白いと言っていただけました。ジョシアッセン先生は、カントリー・バイアス研究で世界屈指の研究者ですが、これを機にご縁もあって今、共同研究をしているところです。

 ―― カイラ先生からの激賞後、どのようにして今回の本の出版にこぎつけたのですか。
 寺﨑 博士号を取ったら博士論文を書籍化したいという願望は、昔からありました。しかし、以前ある先生から「学術書を出版しようと思ったら、自費出版は普通」と言われたことがあり、収入も少なかったため、出版はしばらく無理だろうと半ばあきらめかけていました。そうしたところ、恩藏直人先生から、「早稲田大学エウプラクシス叢書」という、早稲田大学で博士学位を取得して5年以内の人を対象にしたシリーズが早稲田大学出版部から刊行されているので、それに応募してはどうかとご教示いただいたのです。さっそく応募したところ、無事に採択されました(注―早稲田大学エウプラクシス叢書として刊行するためには、早稲田大学文化推進部が年2回実施している募集に応募し、専門審査員による審査を経て、採択される必要がある)。それで今回、出版することができました。

 ―― 本の制作過程はいかがでしたか。
 寺﨑 原稿のチェックなど想像以上に細かくて、おかげさまで誤字脱字も全く見当たりません。本当に完璧な内容の本が制作できた気がします。校正者からのコメントも細かく、私自身も勉強になりました。表現が間違っていたり、誤字脱字があったりする本をたまに見かけるのですが、この本に関しては心配なく進められました。学術出版を専門とする出版社から上梓できて本当に良かったと思っています。母校の早稲田で出版できたことも、自分の中ではすごくうれしかったです。
 早稲田大学出版部の皆様には、本の制作面に加えて営業面でも新聞広告を出していただくなど手厚いサポートがあり、本当に感謝しています。博士号を取得された方がいたら、早稲田大学エウプラクシス叢書での出版をぜひお勧めしたいです。

 ―― ご本を出版された時の周りの方の反応はいかがでしたか。
 寺﨑 「ついに出しましたか」という感じでした。とにかく、すごい勢いでカントリー・バイアス関連の論文を書いていましたので、「いずれ本を出すとは思っていましたが、思ったより早かったですね」と言われることが多かったです。

 ―― 今回の受賞の報に接したとき、どう思われましたか。
 寺﨑 まず、編集担当者の武田さんから「受賞しました」というメールをいただいた時、まったく想定してなかったので、「何だこれは」という感じで、何のメールかなと思いました。メールをよく読んで、こう見て、ああ見て、また上からこう見て、あれっ何か受賞したっぽいなという、そんな感じでした。「やった!」という感じよりも、「あれっ、受賞したのかな。ああ、どうしよう」という感じでした。もちろんうれしかったのですが(笑)。

 ―― ご家族の反応はいかがでしたか。
 寺﨑 妻にメールしたのち帰宅すると、私が意外と落ち着いた様子だったそうで、逆に驚いたようです。きっと、「こんな栄誉ある賞をいただいたのでより一層頑張らなければいけない」という気持ちが芽生えていたからかもしれません。本当にこの分野を究めていかねばという、気の引き締まる思いがしました。

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 ―― 今後、こういうことを研究したい、こういう部分を深めたいという展望がありましたら、お聞かせください。
 寺﨑 消費者のアフィニティとアニモシティという、相反する2つの感情がありますが、ある国に対してアフィニティが高い人に加えて、それが低い人にも有効なアプローチを今研究しています。
 それを考えるときに実験心理学系の理論、たとえば解釈レベル理論とか、最近だと制御焦点理論が使えることが分かってきました。さっそく『ジャーナル・オブ・インターナショナル・コンシューマー・マーケティング』にその第1弾を発表しました。第2弾を今計画していて、だんだんと知見が深まってきています。今までアフィニティが低い国や、低い人へのアプローチはないものと、諦めるしかなかったのが、実はアプローチできるやり方があることが分かってきましたので、それをグローバルに発信するつもりです。最後は日本語にまとめて書籍化したいと思っています。

 ―― 研究者志望の人もそうでない人も含めて、これから世に出ていこうとする若い人たちに伝えたいことは何ですか。
 寺﨑 東浩紀先生の『弱いつながり:検索ワードを探す旅』(幻冬舎文庫)という本があって、すごく共感しました。今、インターネットで検索すれば何でも調べられるじゃないかという人は多いですが、どういう検索ワードを入れるかという面から考えると、考えつく検索ワードの幅の広さや深さはやはり自分で広げるしかないことに気づきます。その深さとか広さを与えてくれるものはやはり実体験です。その世界に飛び込んでみて、初めて気付くことがある。若いときに現地に足を運んでみたり、それまでいた環境と違うところで過ごしたり、学部の交換留学に参加したりすることで分かることは、たくさんあるはずです。こうした実体験を積み重ねることで、自身の問題意識の幅と深さをどんどん養っていかれると良いと思います。それが研究者にとっても、実務家を目指す人にとっても有効なことだと確信しています。
 若いときに研究留学したり、会社で手を挙げて海外に駐在させてもらったり、そういう挑戦が組織にとっても日本にとっても、そして個人の人生にとっても大きく花を開かせてくれるきっかけになるのではないでしょうか。海外に行く機会がなければ、留学生と交流するサークルなどもありますので、積極的に参加されることをお勧めします。

 ―― 特にここ数年の日本は内向き志向の強い傾向にありますが、そういうことではいけないということですね。
 寺﨑 そうです。想像以上に、世界は速いスピードで動いています。今はみんな中国にばかり気を取られていますが、東南アジアも勢いがすごくて、インターネットを活用した様々なビジネスが生まれています。ロンドンにいた時も、マレーシアやインドネシアからたくさんの留学生が来ていました。彼(女)らはすごく優秀で、日本人は到底太刀打ちできないんじゃないかと思うこともありました。マレーシアは多国籍国家ですし、インドネシアにしても様々なバックグラウンドを持った人々が住んでいるので、文化的な適応力は日本人より遥かに上でしょう。こうした人々が海外のネットワークをうまく使ってどんどん活躍していくわけです。
 この国をリードしていく人材になりたい、そういう志のある方は、1年でも半年でもいいので、ぜひ海外に行って知見を広げていただきたいですね。 

(2021年10月17日、聞き手:編集部 武田文彦)

母校表敬訪問時の記念撮影.jpg
母校を表敬訪問した時の記念撮影。左から、恩藏直人・早大常任理事、須賀晃一・早大出版部代表取締役社長(早大副総長)、寺﨑新一郎氏、渡邉義浩・早大理事。


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写真:国境なき技師団 スマトラ島から東北へ

濱田政則・小長井一男・清野純史・鈴木智治・三輪滋・鈴木乃里子 著

新書判 166ページ / 本体:900円+税(2021年2月3日発売)

2004年12月のスマトラ沖地震・インド洋津波をきっかけに設立された国際防災ボランティア団体「国境なき技師団」。土木学会会長の濱田政則・早稲田大学教授(当時)らが中心になり設立した技師団は、防災教育や耐震技術を通じて人々の命を救う。医療技術を通じて命を救う「国境なき医師団」と同じように、独立・中立・公平なNGOだ。インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、中国で被災地の復興を支援する一方、東日本大震災の被災自治体(大船渡陸前高田の両市)へ「シニア技術者」を独自に派遣してきた。技師団の活動に触発された学生でつくる「早大防災教育支援会」「京都大学防災教育の会」の活動も合わせて本書は取り上げ、国際防災ボランティア団体の可能性を探る。

【「試し読み」できます】
国境なき技師団 スマトラ島から東北へ.pdf

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写真:村上春樹の動物誌

小山 鉄郎 著

新書判 272ページ / 本体:900円+税(2020年12月10日発売)

村上春樹氏のインタビューを所収!
日本記者クラブ賞に輝いた文芸記者の著者が、動物を手がかりに村上文学の森に深く分け入る 。 デビュー作の『風の歌を聴け』から『猫を棄てる』までを貫く核心のテーマとは 。好評を博した新聞連載記事を大幅加筆した待望の決定版!

【「試し読み」できます】
(試し読み企画)『村上春樹の動物誌』(小山鉄郎著).pdf


◎『村上春樹の動物誌』の担当イラストレーターに聞く――北窓優太さん

 小山鉄郎氏の新書新刊『村上春樹の動物誌』でイラストを担当した北窓優太さん(38)=大阪府豊中市在住。新書の章扉にある30点のイラストは、村上春樹氏の深い作品世界にいざなう小山氏の考察に独自のアクセントを付けています。気鋭のグラフィックデザイナーでもある北窓さんに動物のイラストについて、編集部が聞きました。

――動物のイラストとはいえ、村上春樹氏の作品と、それに考察を加える小山鉄郎氏の「双方の世界」をくみ取って描くのは難しかったと思います。

北窓 僕自身、村上春樹さんの本が好きです。20代の頃に熱心に読みました。その読み方が浅いということを、小山さんの原稿を読みながら知りました。動物を糸口に考察を展開しながら、どんどん深くなっていく。重くて深いなあと感じました。

――イラスト制作で注意した点はどこですか。

北窓 村上春樹さんの作品世界を「大陸」と考えるなら、小山さんはその「大陸」の「地図」を作っている。海岸線、河川、平野、山脈などを「地図」に落とし込んでいっている。そして「大陸」のことを理解しようとしている。だから、僕は「大陸」のこと、「地図」のことを念頭に置き、「大陸」と「地図」の関係を忘れないようにしました。小山さんが何千字も使って「地図」を表現しようとするのに対し、僕は一枚のイラストでそれを表現しなければならない。僕の「地図」がピンボケではいけない。そこに難しさと楽しさがありました。

――「新しい発見」があったわけですね。

北窓 小山さんの考察から浮かび上がるイメージ。村上春樹さんの作品から広がってくるイメージ。「双方の世界」を通じて僕の中に湧き上がってくるイメージ。それをイラストに表現することは新しい試みでした。例えば、第十三章の「羊男」。村上春樹さん自らが描いた絵が小説に載っています。まず、村上さんの絵のイメージを壊さず、そして過度に引きずられず、シンボリックで期待感が漂う「羊男」を描きました。実は小山さんの原稿を読むまでは、「羊男」が村上さんにとって「永遠のヒーロー」であることを知りませんでした。20代前半に『羊をめぐる冒険』を僕が読んだ時、「羊男」は物悲しい存在であると理解しました。小山さんの指摘を受けて、ある種の衝撃を受けました。

――北窓さんと同じような「新しい発見」を、イラストを見た読者も味わえるでしょうか。

北窓 小山さんの考察に続いて、僕のイラストを通じても「新しい発見」があるとうれしいです。小山さんは「村上春樹作品は、あらゆる読者の前に開かれている」と言っています。僕のイラストも、読者のイメージを縛ったり、見る人に固定観念を植え付けたりすることがあってはいけないと思います。だから徹底的に、象徴的に描いたのです。村上春樹小説に対する読者のイメージが、僕のイラストからもさらに広がっていくことを願っています。(文責・俊)

「羊男」Ⓒ北窓優太.jpg
「羊男」(Ⓒ北窓優太)








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個展会場で『村上春樹の動物誌』の原画(イラスト)を説明する北窓優太氏=東京・神宮前、12月15日午前






【個展の情報】『村上春樹の動物誌』のイラスト全30点の展示を含む北窓優太さんの個展「LIFE & SLUMBER」が12月15日から12月20日まで都内で開かれます。会場は「Popularity gallery & studio」(東京都渋谷区神宮前2-3-24、電話番号 03-5770-2331)で、午前11時から午後7時まで(最終日は午後5時まで)。入場無料。全日、北窓さんが会場に詰める予定です。個展の関連URLはこちら。https://www.popularity.co.jp/about-1

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写真:AとZ

森永 邦彦 著

新書判 202ページ / 本体:900円+税(2020年12月10日発売)

パリコレで活躍する日本人トップデザイナー初の書き下ろし。
「服は言葉を発することができない」「ファッションデザイナーは服の代わりに、服のことを伝えようとする」「テーマとコンセプトが服づくりの根幹」。そう言い切る著者の発想の源泉を明かす力作。ファッションで「世界と自分」を変えたいと願う人へのヒントと励ましがここにある。

森永邦彦氏の新書新刊書き下ろし『AとZ―アンリアレイジのファッション』を装丁したのはデザイナーの三浦正已さん(62)です。精文堂印刷のデザイン室に在籍し、本書がちょうど1000冊目の担当となりました。インパクトのあるカバーと帯について、三浦さんに編集部が聞きました。

――『AとZ』のタイトルは新書史上「最単」、つまり最もシンプルだと言われています。シンプルであるが故の難しさや苦労はあったのでしょうか。
三浦 碁盤は宇宙だと言われます。狭い碁盤に無限の宇宙が広がっていると。私は本のカバーも表紙も、基盤と同じだと考えています。限りある紙面に宇宙が広がっている。その宇宙にどんな意匠がふさわしいか。大切にしているのは、著者に喜んでいただけるデザインです。著者のことを考えることで、宇宙は可能性を秘めてくると私は思っています。
――アルファベットの「A」「Z」。それをつなぐ、ひらがなの「と」。文字のバランスを保つのにどんな工夫を凝らしたのですか。
三浦 アルファベットの「A」「Z」はシャープです。切れ味鋭い感じが漂う文字です。だからこそ、「A」と「Z」の文字をつなぐとき、柔らかい感じを出せないかと考えました。鋭い+柔らかい+鋭い、という組み合わせにすることで、宇宙をさらに豊かにしたいと考えたわけです。鋭い+鋭い+鋭い、も、柔らかい+柔らかい+柔らかい、もどちらも面白くありません。
――アルファベットの「A」「Z」に比べて、ひらがなの「と」がとても小さく表現されています。
三浦 気がつかれましたか。「と」を小さくすることで、「A」「Z」が目立ち浮き上がってきます。その一方で、何事も包み込む柔らかい「ひらがなの力」で、余分なアルファベットの角が取れる。「と」を最大限に生かすことで、鋭い世界と柔らかい世界が共存します。それは著者の森永邦彦さんが求めているものに少しは通じるのではないかと考えています。
――カバーではメインタイトルの「AとZ」、サブタイトルの「アンリアレイジのファッション」、著者名の「森永邦彦」の三つの配置が絶妙です。
三浦 何かと何かをつなげるものは、優しいものがいいです。この三つをつなげるものは何だと思いますか。実は余白です。早稲田新書では「余紅(よこう)」とでも言うのでしょうか。余白、余紅の美しさ、魅力を引き出せるかどうか。それをいつまでも私は大切にしたいと思っています。(文責・俊)

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