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藤井 省三 著
新書判 260ページ / 本体:900円+税(2021年12月21日発売)
村上春樹の文学世界を読み解く「記号」は中国であると考える著者が、「猫好きの村上春樹」と「猫嫌いで小鼠好きの魯迅」を照らし合わせることで、二人の文学世界を掘り下げる本書。 手掛かりは「魯迅」と「父親の中国戦線従軍体験」。そして「中国文化の村上受容」と「高橋和巳」。 比較文学的手法を駆使する著者にいざなわれ、村上文学の深淵をのぞくとき、その先には別の深甚なる世界が待ち受けていた―。村上が中国をどう見て、中国が村上をどう見ているのか。そして中国人は村上文学をどのように読んでいるのか。それらの考察を本書でくまなく展開する。「早稲田大学創立者・大隈重信没後 100 周年」( 2021年 1 月 10 日)の特別企画第2弾。
渡邉 義浩 著
四六判 280ページ / 本体:1,800円+税(2021年12月20日発売)
中国の正統な歴史書である「正史」は、いつ、どのようにして、「儒教」のくびきを脱したのか。司馬遷の『史記』はそもそも思想を語る書だった。しかし、やがて、史書として認識される。「三国志」研究の第一人者である著者は、「正史」と「儒教」の抜き差しならない関係を、時には推理小説のようにひもとき、またある時は大河小説のように活写していく。事実を記すだけでは収まらない中国史学が、国家の正統性や勧善懲悪の考えを取り込みながら、独自性と独創性を秘めることを大胆に考察する本書。西欧の近代歴史学とは異なる歴史学の位相、「ワタナベ 史学」の到達点がここにある!!
渡邉 義浩 訳
A6判 372ページ / 本体:1,000円+税(2021年12月20日発売)
孔子とその弟子の言行録である『論語』は、これまであまたの解釈本が読み継がれてきた。そのうち完全に残る最古の解釈本が、何晏の『論語集解』である。三国時代に著され、本来の孔子や初期儒家の考え方に近いといわれる。魏の曹爽のもと皇帝権力の再強化を目指した政治家の何晏が、それまでの『論語』 解釈本をもとに編纂。特に何晏は、「真理の探究には『一』を知ること」 と、 「一」に核心を置く。『論語集解』を読み解くことで、三国時代の思想と『論語』の 初期の形成過程にふれることができる。「三国志」研究の第一人者による『論語集解』現代語訳に、訳注と他の『論語』解釈本等との参校を記した、『論語』の原点が文庫版の上下巻で誕生。下巻に「解題 何晏と『論語集解』」 所収。
「解題」より
何晏は、「三国志」で有名な曹操の寵愛を受け、宮中で育った貴公子である。すなわち、何晏の『論語集解』は、三国時代の『論語』の解釈、読み方なのである。すでに孔子が生まれてから八百年が経ち、さまざまな読み方が存在した。「集解」という書名に表れるように、多くの人々の解釈を集めてはいるが、あくまでも『論語集解』は、「論語序」の最後に名を記す、何晏が正しいと考える『論語』の解釈なのである。
渡邉 義浩 訳
A6判 370ページ / 本体:1,000円+税(2021年12月20日発売)
孔子とその弟子の言行録である『論語』は、これまであまたの解釈本が読み継がれてきた。そのうち完全に残る最古の解釈本が、何晏の『論語集解』である。三国時代に著され、本来の孔子や初期儒家の考え方に近いといわれる。魏の曹爽のもと皇帝権力の再強化を目指した政治家の何晏が、それまでの『論語』 解釈本をもとに編纂。特に何晏は、「真理の探究には『一』を知ること」 と、 「一」に核心を置く。『論語集解』を読み解くことで、三国時代の思想と『論語』の 初期の形成過程にふれることができる。「三国志」研究の第一人者による『論語集解』現代語訳に、訳注と他の『論語』解釈本等との参校を記した、『論語』の原点が文庫版の上下巻で誕生。下巻に「解題 何晏と『論語集解』」 所収。
「まえがき」より
それでも「古注」は、多くの人々により、長い期間をかけて、異なる思想的状況の中で著されてきた『論語』が抱える矛盾をそのまま、われわれに伝える。津田左右吉によれば、『論語』の章の中で、孔子その人の言葉や行動を伝えるものは、半分にも満たないという。われわれは、「古注」から、それを考えていくことで、『論語』の形成過程に思いを致し、孔子の本来の教えを探ることができる。
瀬川 至朗 編著
四六判 332ページ / 本体:1,800円+税(2021年12月17日発売)
社会における分断と格差が進むいまこそ、市民の知る権利に応えるというジャーナリズムの機能が問われている。早稲田の人気講座「ジャーナリズムの現在」15回の講義でのジャーナリストたちの言葉には、市民が自由で自律的な社会を築いていくために必要な情報を市民に伝えようとする思いが込められている。隠された公文書、かんぽ生命不正販売、原発事故現場の真実、冤罪がうまれた背景、静かに広がる環境破壊、武漢封鎖における市民の声、沖縄問題のゆくえ――ジャーナリストたちがどのような視点を持ち、プロセスを経て、報道に至ったのか、作品をつくったのかが綴られた一冊。
阿内 春生 著
A5判 314ページ / 本体:4,000円+税(2021年11月2日発売)
教育行政研究において、義務教育諸学校に関する行政は重要な研究対象である。市町村が管轄する公立小中学校は、教育を受ける権利、教育の機会均等を実現するために法令、国庫補助など精密な制度設計がなされている。本書では、公立小中学校における学級編成や教員人事について、市町村独自の教育政策導入に関連する市町村内のミクロな政治状況を分析する。
市町村の教育ガバナンスの中心は教育委員会や事務局という前提があり、教育政策決定の重要な機関でありがなら、研究上において重要視されてこなかったのが市町村議会である。2014年の地方教育行政法改正により教育委員会制度と首長の権限が見直され、市町村議会の関与は今のままでよいのだろうか。市町村議会における教育政策の審議について考察し、教育の政治的中立性は確保できているのか、議会の関与の方法を検討し、関与の限界を明らかにする。
菅田 茂昭 著
A5判 151ページ / 本体:2,800円+税(2021年10月25日発売)
イタリア・サルジニア島の方言サルジニア語は、ロマンス語の一つである。他のロマンス語ではラテン語からロマンス語への変化の過程で消滅したものが、サルジニア語には残っていることが多く、サルジニア語はラテン語の原型をよくとどめているという特徴を持つ。
サルジニア島での現地調査の結果をもとに、サルジニア語の音声・文法・語彙・語形成を解説するほか、このことばがロマンス語圏にどう位置付けられるかを明らかにする。
【訂正情報】本書につきましては誤記がございました。お詫びのうえ、下記の通り訂正させていただきます。
『サルジニア語』正誤表.pdf
假屋崎 省吾 著
新書判 181ページ / 本体:900円+税(2021年10月27日発売)
世界に知られる華道家・假屋崎省吾氏が書き下ろす初の新書は「心に花をいけませんか」と語りかけます。コロナ禍で灰色に変わってしまったわたしたちの心に彩りを取り戻してくれる存在としての花。その手立てとしてのいけばな。やがて枯れるからこそ美しい花のありようについて「絶対美感」をキーワードに表現していきます。人類誕生のはるか以前から地球上に咲いていた花は、人類が惨禍に直面するたび、優しく見守ってくれたと言います。「嫌いな事」を幼少時から押し付けられなければ「絶対美感」は「絶対音感」同様、後天的に身に付けられるとも。章の扉に置いた花の挿し絵、見開きのページにチューリップの形をレイアウトした本文。内容も外観も新書の常識を覆す、子どもへの読み聞かせもできる新書の誕生です!
◎『絶対美感』の担当イラストレーターに聞く――アサイレイコさん
華道家・假屋崎省吾さんの新書新刊『絶対美感』で、挿し絵を担当したのはアサイレイコさん。章扉の横に置かれた挿し絵19点からは、独自の温もりが伝わってきます。イラスト・デザイン・翻訳を手掛けるアサイさんに、挿し絵制作の楽しさと難しさについて編集部が聞きました。
――豪華絢爛なイメージがある假屋崎さんの「花の世界」を挿し絵にするのは苦労の連続だったと思います。
アサイ 假屋崎さんが書き下ろした『絶対美感』の原稿をまず読ませていただきました。最初から最後まで熟読しました。子どものころの思い出が深く心に残りました。特にお母さまとのやりとりから、假屋崎さんの中にある「優しい部分」を感じ取ることができました。小さな花、小さな命を大切にする「優しい部分」です。それを形にしたいと考えました。苦労よりは楽しさの連続でした。
――制作の依頼があってから入稿までわずか半月だったと伺っています。
アサイ スケジュールや締め切りはもちろん気になりました。制作期間が半月はハードですから。假屋崎さんの「優しい部分」が『絶対美感』の核になっていると確信してからは、制作は順調でした。ご本人が書かれた本や雑誌は可能な限り目を通しました。いつしか、假屋崎ワールドを知ることが楽しみでもあり、励みにもなっていました。
――挿し絵の制作で注意した点はありますか。
アサイ 「花をいけるように、言葉をいける」。そう考えて、假屋崎さんが原稿を書かれたことを編集長から聞きました。それがきっかけとなり、言葉で「花の世界」を伝える假屋崎さんに対して、わたしは挿し絵で「假屋崎さんの世界・物語」を伝える必要があると考えました。各章に置かれた一つの挿し絵で、章全体のストーリーを描くということです。假屋崎さんが「空間における余白」を大切にされていることを知り、わたしもページの「余白」を生かすよう心がけました。「まえがき」用のラフが出来上がった時、なぜだか、とっても満足しました。
――挿し絵が各章のプロローグになっている意図が分かりました。
アサイ 読者を導こうとするあまり、挿し絵が自己主張をし過ぎると、それは押し付けになってしまいます。假屋崎さんが「余白」を尊重しているのは、見る人に対して「鑑賞の可能性」を確保しておきたいからではないでしょうか。「解釈の幅」を狭めたくないということです。それも「優しい部分」につながっていると思います。わたしの挿し絵も同じです。挿し絵が読者の「よき導き手」になるためには、読者の「余白」を最大限に尊重しなければいけないとわたし自身は考えています。
――「余白」を特に工夫した章はどこですか。
アサイ すべての章です(笑)。特に挙げると、「退職」の題が付いた第十一章でしょうか。退職という出来事がポジティブなことなのか、ネガティブなことなのか。人によって、また状況によって異なります。ですから、挿し絵のイメージを固定的に、かつあらかじめ決めることはできません。読者が本を手にするときの事情によって、イメージは左右されるかもしれません。はしごの挿し絵を見て、自分のイメージを膨らませてから章を読み進めていく。章を読み終えたとき、挿し絵のイメージが自分の理解とどのくらい合っていたのか、少しでも振り返ってもらえるとうれしいです。挿し絵の制作はこれからもどんどん引き受けたいと思います。(文責・俊)
春口 淳一 著
A5判 304ページ / 本体:4,000円+税(2021年10月15日発売)
アフター・コロナを見据えて、大学はいま何をすべきか――。
在籍学生数1,000人足らずの小規模大学に注目し、その留学生政策の実態を検証するとともに、留学生の満足につながることが期待されるエンロールメント・マネジメント(学生が大学に入学し、在学し、卒業するに至るまで、学業面、生活面を大学側がフォローする試み)と日本語教育の役割について考察する。
留学生への教育・支援に携わる大学関係者、必読。
手塚 孝典 著
新書判 210ページ / 本体:900円+税(2021年7月31日発売)
満蒙開拓団の日本人たちは1945 年8 月、ソ連侵攻により満洲(現・中国東北部)に置き去りにされ、集団自決した。
国策に従い彼ら彼女らを満洲へ送り込んだ村の有力者は、それを知り自らも死を選んだ。
時代に踊らされ、時代に流され、時代に殺された人々。時代は国そのものではなかったか――。
著者初の書き下ろしは、村の有力者が書き残した日記を手掛かりに、満蒙開拓の深層、時代と侵略の真相に迫る。
「満州事変90 年」に当たる2021 年の記念碑的ルポルタージュがここに誕生!!! きな臭い日中関係を再考するための糸口が本書に記されている。