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高口 洋人 編
A5判 140ページ / 本体 1,500円+税(2018年10月20日発売)
災害大国のわが国において、マンションの住民やビルのテナント事業者が安心してすごすためには、地震などの災害に対して自分が入居するマンションやビルがどれだけの耐久力をもち、また、被災したときにどれだけ迅速に復旧できるのかという、建物のレジリエンス性能に関する情報が公開されていることが望ましい。
しかしわが国では、そうした情報はマンションやビルのオーナーに偏在しているのが現状であり、情報の公開を義務付ける法律も存在しない。その結果、人々は建物の耐震性や災害が起きたときの復旧に関する情報を知らないまま、入居を続けている。
こうした由々しき状況を変えるべく、不動産評価の新たな仕組みづくり、地震保険の活用、建築保全の評価・格付けの新手法の開発など、人々が安心して日々の生活をおくるための具体的手法を提案する。
李 慧敏 著
A5判 318ページ / 本体 4,000円+税(2018年9月5日発売)
かつて電力産業は、日中両国において厳しい政府規制の下に置かれてきた。しかし、近年日本では、発送電分離など規制緩和が進められている。一方、中国はいち早く電力産業の規制緩和に取り組んできたが、自由化への過程は必ずしもうまく進んでいないのが実情である。
日中両国における電力産業自由化の歴史と現状を分析するとともに、電力産業のような寡占産業における事業規制法と競争法の相互関係を考察する。
日本平和学会 編
A5判 186ページ / 本体 2,200円+税(2018年6月29日発売)
〈A I≠神〉の人間の平和へ
いわゆる宗教と戦争とを結ぶさまざまな表象はおびただしく存在しますが,平和
へ紡がれる表象はなかなか得がたいものがあります。戦争言説に塗れてしまって
いる宗教の現況から,平和価値は想像し難いのが実際かもしれません。不断に創
造的想像力を駆使して溢出するような平和価値が,どういう具合に安定的に〈信
の構造〉へ接合するものなのか,真摯に平和を祈念するさまざま信仰と通念化す
る〈宗教〉概念を超え,信仰と平和の未来を探ります。
森 達也 著
A5判 328ページ / 本体 4,000円+税(2018年5月31日発売)
われわれは思想とどのように付き合えばよいのか。
政治的自由論とその批判、価値多元論と自由主義論、ナショナリズムとシオニズム、思想史分野における業績、そして知識人としての人物像……。
英国の政治思想家アイザィア・バーリン(Sir Isaiah Berlin, Order of Merit, 1909-1997)の自由主義思想の特質を明らかにし、全体像を描き出す。
「これまで断片的に語られてきたバーリンの思想の全体像を、「品位ある政治」とシオニズムの相克として浮かび上がらせる。」山本圭氏(立命館大学法学部准教授)が、2018年上半期に出版された書籍の中で印象に残った1冊として紹介(『図書新聞』2018年7月21日号)。
「著者によって、積極的自由と消極的自由というバーリンの隠喩が、一九五八年という文脈を背景として解明された上で、二一世紀のわれわれが生きる分脈において再創造されることを期待したい。」『図書新聞』2018年9月8日号にて紹介。評者:濱真一郎氏(同志社大学法学部教授)。
「初期の哲学研究から自由主義を中心とする政治構想、対抗啓蒙やロマン派に関する思想史研究、そしてシオニズムやイスラエル問題に対する発言まで、バーリンのテキストを入念に検討するだけでなく、バーリン研究の膨大な蓄積、さらには関連する思想動向をも参照するなど、濃密というほかない分析を提供している。」『政治哲学』第25号にて紹介。評者:乙部延剛氏(茨城大学人文社会科学部准教授)。
「本書は、思想家研究でありながら、現代の規範理論への貢献も考慮したものであり、それは、魅力的なリベラリズム解釈の提示と共に、学問研究と現実政治の関係性の考察を追求するものとなっている。」『イギリス哲学研究』第42号(2019年3月)にて紹介。評者:山岡龍一氏(放送大学教養学部教授)。
「アイザィア・バーリンの政治思想の研究。日本語で書かれたものとしては最初の本格的モノグラフといえよう。(中略)バーリンの思想と学問を全体として論じた研究書はこれまでになかった。」『政治思想研究』第19号(2019年5月)にて紹介。評者:松本礼二氏(早稲田大学名誉教授)。
「およそ人文・社会科学における良書とは、議論に決着をつけるものではなく、新たな視座を示し議論を活発化させるものである。本書が多くの読者に読まれ、日本におけるバーリン研究が活性化することを期待したい。」『社会思想史研究』第43号(2019年9月)にて紹介。評者:蛭田 圭氏(オックスフォード大学ウォルフソン・カレッジリサーチフェロー)。
「本書は、思想家バーリンの内面に肉薄しようとする研究である」『ユダヤ・イスラエル研究』第33号、日本ユダヤ学会(2019年12月)にて紹介。評者:市川裕氏(東京大学名誉教授)。
【訂正情報】本書につきましては誤記がございました。お詫びのうえ、下記の通り訂正させていただきます。
『思想の政治学』正誤表(Web用).pdf
柳川 響 著
A5判 口絵+302ページ / 本体 4,000円+税(2018年5月31日発売)
保元の乱に敗れ、37歳の若さでこの世を去った藤原頼長。妥協を知らない苛烈な性格から「悪左府」と呼ばれる一方、「日本一の大学生(だいがくしょう)」と評されるほど、ひときわ優れた学識の持ち主でもあった。
議論が尽くされたとはいいがたい頼長の文人としての顔を遺された資料から明らかにし、その実像を捉え直した意欲作。
嘉納 成男 著
B5判 オールカラー211ページ / 本体 3,000円+税(2018年4月5日発売)
近年、建築工事が複雑化し、規模も大きくなるに従い、工事着工前の工事計画の綿密な検討が不可欠となっている。工事の生産性向上を図るためにも、工事の進捗状況を詳細にシミュレーションで再現し、問題点や改善点を見出す必要がある。しかし、現在市販されている数多くのシミュレーションソフトは、どれも建築工事用に開発されていないため、実用的ではない。
著者は、10年の日月をかけて施工シミュレーションの開発に心血を注いできた。本書で提案する「施工シミュレータ」は、その成果である。これにより、工事計画の問題点の把握やその改善策の立案に役立たせるとともに、工事計画の内容に対する関係者の情報共有と合意形成のツールになることが期待される。
豊富な図版とともに、シミュレータをやさしく解説。大規模建築に携わっている、あるいは関心のある施工者、設計者、必読の書。
「本書は施工シミュレータの方法論、プロトタイプシステム、開発課題などを明らかにし、より効率的に表現できるモデル構築のための研究成果をまとめた。施工シミュレータの開発を目指す人に必読の書。」2018年4月25日建設通信新聞にて紹介。
「シミュレータの開発をする者のみならず、大規模建築に携わる施工者、設計者、必読の書である。」『建築技術』2018年7月号書評欄にて紹介。
「本書では、建築工事の進捗状況を着工前にコンピュータ上で再現する「施工シミュレータ」の考え方を紹介。工事計画の問題点の把握やその改善策の立案に役立つとともに、計画の内容に対する関係者間の情報共有・合意形成のツールとして活用できる。」『防水ジャーナル』2018年7月号新刊図書欄にて紹介。
日本平和学会 編
A5判 224ページ / 本体 2,200円+税(2018年4月5日発売)
科学技術の功罪を問う。――
核の軍事利用、農薬などの科学技術、遺伝子組み換えなどの生物技術……。世界を進歩させた科学技術は驚くべき暴力性も示す。科学技術を暴力と平和の視点から考える。核廃絶運動国際キャンペーン(ICAN)ノーベル平和賞受賞記念スピーチ収録。
水野 忠尚 著
A5判 262ページ / 本体 3,500円+税(2018年3月1日発売)
イギリスのEU離脱、ロシアのクリミヤ半島問題、ウクライナの混乱、シリアをはじめとする中東の混乱、中国の強引な海洋進出、アメリカ・トランプ大統領の誕生、北朝鮮の核問題など、世界の安全保障をめぐる政治体制は不安定化している。
一方、経済面においても、リーマン・ショック、中国経済の減速などに象徴されるように、世界経済はグローバル化の進展とともに不透明感を増している。
こうした混迷する世界政治と世界経済に秩序をもたらす手がかりを与えるのが、アンドレアス・プレデール (1893-1974) が提示した立地論を基礎とした世界経済論である。プレデールは、経済空間と政治(国家)空間の範囲の違いから生ずる諸問題を検討し、経済効率を損なわないためには政治の調整、すなわち国際的な政治的統合が必要であると主張したドイツの経済学者である。その経済思想は、EUなど戦後のヨーロッパ統合のなかにも貫かれている。しかし、有名な学者であるにもかかわらず、日本においてはいま一つ知名度が低い。
本書は、プレデールに関する本邦初の本格的研究であり、混迷する現代に秩序をもたらす手がかりを見出そうとするものである。
大塚 耕平 著
四六判 528ページ / 本体 2,500円+税(2018年2月1日発売)
【「あとがき」より】
言語、科学、文化、宗教等の文明を生物の中で人間だけが有しているのは、人間が最も優れた生物である証ではない。最も愚かな生物であるが故に、人間だけに言語、科学、文化、宗教等の文明が授けられ、その愚かさの源である欲を制することが課されたと受け止めるべきであろう。
しかし、現実には、その言語で罵り合い、科学で殺戮兵器をつくり、芸術作品を奪い合い、宗教ですら争うことがある。人間はかくも愚かな存在、「賢い愚か者」である。「賢い愚か者」の未来は、どこに向かっているのだろうか。
「経済学や仏教研究の著作を重ね、哲学的な思索を深める著者が「現時点での到達点」と位置付けた大著。」2018年6月6日 中日新聞「みんなの本」にて紹介。
Petra Karlová 著
A5判 320ページ / 本体 4,000円+税(2018年1月30日発売)
The established theory argues that pre-war Japan’s perspective of Southeast Asia was mainly concerned with its natural resources. However, this book on ethnologist Matsumoto Nobuhiro shows that scientific study of Southeast Asian culture had already existed in this time. It traces the formation and development of Matsumoto’s ideas on Southeast Asia based on his writings in the period 1919-1945. Matsumoto started studying this region from evolutionist ethnology and decided to focus on it under the influence of diffusionist ethnology, because he believed in significance of Japan's relation with Southeast Asia in ancient times. In the 1930s and 1940s, he established Southeast Asian studies and Vietnamese studies by bringing research materials from French Indochina to Japan, introducing them to the Japanese people and founding research institutes at Keio University. He acquired various theories from Western and Japanese scholars and somewhat adjusted his arguments to the political climate of the era. This book examines evolutionist, sociologist and diffusionist ethnology, Southern Culture Theory, Southward Theory, Climate Theory, Orientalism, Southern Advance Theory, and Pan-Asianism in his works. It reveals that Matsumoto’s perspective of Southeast Asian culture was a patchwork of arguments from many theories. In this pattern, he offered multiple views on this culture, which instigated further development of Southeast Asian studies in diverse fields, but his conclusion on Japan-Southeast Asian relations remained ambiguous.